学力は高いのに自信がない日本の子どもたち――基礎学力とメンターの役割を考える

参考記事の要約

出典:日本の子どもは主体的に学ぶ意欲がない? 学力は高いのに自律学習が苦手な原因

2022年のPISA調査で、日本の子どもは「科学的リテラシー」2位、「読解力」3位、「数学的リテラシー」5位と、世界トップレベルの学力を示しました。しかし同時に、「自律学習を行う自信」に関しては37か国中34位と低い結果でした。

この背景には「非認知的スキル」(興味関心、モチベーション、粘り強さ、協働力など)の不足があります。学力は高いのに意欲や自信が育ちにくい現状は、日本の教育が認知的スキルに偏り、家庭教育や地域教育の役割が弱まったことに関係していると指摘されています。

OECDや研究者たちは、学力と非認知スキルの相互作用こそが人間の成長や自己実現につながると強調。アメリカの経済学者ジェームズ・ヘックマンは「非認知的スキルは家庭教育の影響が大きい」と研究で示しています。記事では、学校だけでなく家庭や地域が主体的に子どもを支える必要性が強調されています。

「自信がない」という回答は文化の問題かもしれない

私は長く塾で子どもたちを指導してきましたが、「自信があるかどうか」を問う調査結果を見ると、いつも一つの疑問が浮かびます。日本人には「謙遜(けんそん)の文化」が強く根付いているのです。

たとえば、テストで95点を取った子に「得意だね」と声をかけても、「いや、まだまだです」と答える姿を何度も見てきました。海外の子どもなら「得意だよ!」と即答する場面でも、日本の子は控えめに答える――その国民性が調査結果に影響しているのではないか、というのが私の個人的な意見です。

高い学力ほど「まだ足りない」と思う子どもたち

私の塾では、高偏差値の子どもほど「自分にはまだ足りない」と考える傾向があります。これはネガティブに捉えるべきではなく、むしろ「さらなる高みを目指す意欲」と捉えることができるでしょう。

つまり「自信がない」のではなく「もっと成長したい」と思っている。その姿勢を肯定的に見ることは、子どもたちの努力を認めるうえでとても大切だと感じます。

本当の課題は指導者側にある

学力の高さをどう活かすか――そのヒントを子どもに与えるのは指導者です。私は教育者であると同時に、薬局やIT会社、コンサルティング会社も経営しています。その経験から強く思うのは、「学んだ知識が社会でどう生きるのか」を伝えられるかどうかが教育者の力量だということです。

教育者が経営者なら、学力を経営戦略に結びつける視点を。技術者なら、学んだことを実際の技術開発にどう応用するかを。そうした「つなぎ役」としての教育者の役割が、これからますます重要になるでしょう。

基礎学力の価値は絶対的

ここで強調したいのは「基礎学力の価値」です。私の個人的な意見としては、基礎学力が欠けている人は社会で力を発揮するのが難しいと感じています。なぜなら、基礎学力は「理解する力」を育てるからです。

算数や国語といった義務教育の内容は、「社会で必要な知識だからやる」だけではありません。それらは、抽象的なことを理解し、具体的に表現するための土台になるものです。言葉を豊かに使える人が多様な経験を語れるように、基礎学力は人生を形づくる基本なのです。

「工業社会型教育」批判よりも大切なこと

教育に関しては「工業社会型の知識偏重」という批判がよくなされます。しかし、私は「今の日本の教育は決して間違っていない」と考えています。なぜなら、PISAの結果がすでにそれを証明しているからです。

むしろ重要なのは、その学力をどう活かすか。そこで必要なのが「メンターの存在」です。学校や家庭だけでなく、人生を導く大人との出会いが、子どもたちの可能性を広げていきます。

親・先生・メンター――三つの学びの柱

子どもを育てるには、三つの柱があると考えています。
・親:社会のモラルや生きる基本を教える存在
・先生:学問や基礎知識を体系的に教える存在
・メンター:人生やキャリアの方向性を示す存在

この三つは、誰かが「用意してくれるもの」ではありません。自ら求め、出会いを掴み取ることでしか手に入らないのです。大人ができるのは、その「きっかけ」を設計すること。子どもに多様な大人と出会う機会を与えることだと思います。

家庭と地域の再興がカギ

参考記事にもあるように、学校教育にすべてを任せるのは限界があります。非認知スキルを育てるには、家庭や地域が教育の一部を担うことが欠かせません。

たとえば、地域の大人がメンターとして関わったり、親が家庭で子どもの小さな挑戦を支えること。そうした日々の積み重ねが「自律学習の力」につながるのではないでしょうか。

まとめ

日本の子どもは、世界トップレベルの学力を持ちながら「自信がない」と言われます。しかしそれは、謙遜文化の影響や「さらなる高みを目指す意欲」の裏返しである場合も多いのです。

大切なのは、基礎学力をしっかり育て、その力をどう活かすかを導いてくれる教育者やメンターと出会うこと。学校、家庭、地域がそれぞれの役割を果たし、子どもたちに学びの意欲を育む土台をつくることが、これからの教育に欠かせないと考えます。

この記事が、中学生やその保護者の皆さんにとって「学びの意味」を考えるきっかけになれば幸いです。

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