こんにちは。沖縄進学塾を運営している比嘉大(ひがたけし)です。
5月5日「こどもの日」に発行された毎日新聞の記事「公教育の価値問い直す時」は、今の教育に関わる多くの示唆を含んだものでした。記事の要点を以下に箇条書きでご紹介します。
毎日新聞「公教育の価値問い直す時」要点まとめ
- 日本の公教育はPISA(学力到達度調査)で数学・科学1位、読解力2位と高評価
- 経済的に不利な家庭の子どもも高得点で、学力格差が比較的小さい
- 学校への所属感も高く、北欧諸国を上回る水準
- 教員は授業以外の多忙な業務に疲弊しており、教育本来の力が発揮しにくい
- 特に大阪では成績重視の改革により、教員の残業や事務負担が深刻化
- 全国的にも学習指導要領改訂やICT導入、不登校・いじめ対応で教員の負担増
- 政府は35人学級や教職調整額見直しを進めているが、OECD中で教育支出は最低レベル
- 元校長の久保氏は「居心地の良い学校づくり」こそが学力向上に必要と提言
- 私立高校授業料の無償化により、公立高校の定員割れや統廃合の懸念が強まっている
- 少子化と教育の多様化に対応するため、社会全体で公教育の役割を見直す必要がある
この記事を読んで、私自身の現場での実感と重なる部分が多く、改めて感じたことを以下にまとめていきます。
ここからは、記事内容と現場の実感をもとに、沖縄の実情や保護者が考えるべき視点を交え、より深く掘り下げていきます。
今、何が起きているのか? 沖縄の教育現場から見えるもの
※注記:沖縄県の小学生は全国平均レベルの学力を維持している一方で、中学生になると全国平均を下回る傾向があり、全国最下位となる年度もあります(文科省・全国学力調査より)。
沖縄県は、小学校段階では全国でもトップレベルの学力を見せます。しかし、中学生になると全国最下位付近に転落する。この事実に、多くの教育関係者が頭を悩ませています。
これは単に「中学校の先生が悪い」という問題ではありません。背景には、以下のような沖縄ならではの事情が複雑に絡んでいるのです。
- 共働き家庭が多く、家庭学習のサポートが十分にできない
- 部活動が“学童代わり”になっており、勉強よりも預かりの機能を期待される傾向が強く、那覇市教育委員会でも外部指導者や保護者の協力体制の整備に取り組んでいます
- 学習意識の低さから、学校任せ・先生任せの傾向が強くなる
- 教員は勉強指導に集中できず、生活面の対応に追われてしまう
- 県の貧困率が高く(沖縄県の子どもの相対的貧困率は29.9%で、全国平均の約1.8倍)、教育格差が世代間で再生産されやすい
光明となる制度「まなびクーポン」
那覇市では、「まなびクーポン」という制度を導入しています。この制度は、生活保護世帯・就学援助認定世帯・児童扶養手当受給世帯の小学4年生から中学3年生を対象に、学習塾・家庭教師・通信教育などの費用を一部助成するというものです。
これは、経済的に厳しい家庭の子どもにも、学校外で学ぶチャンスを提供する重要な制度です。ただし「制度があることに気づき、正しく利用すること」が前提です。つまり、保護者の情報リテラシーが、子どもの学習機会を大きく左右するのです。
学校の変化と子どもへの影響
例えば、2025年度に那覇市の鏡原中学校では定期テストや担任制度が廃止されました。他校でも、定期テストの回数が削減されてきています。
先生の負担軽減を目的とした変化ですが、その結果、次のような懸念もあります:
- テストがなくなり、目標が見えにくくなったことで学習意欲が低下
- 塾の実力テストでも成績が下がる傾向が出始めている
- 子どもたちが「勉強は自分の責任」という自覚を持ちにくくなっている
保護者に問いたい「選択と備え」
今の学校は、かつての「すべてを任せられる存在」ではありません。
では、どうすればいいのでしょうか?
ひとつの答えは、“役割の再構築”です。学校は授業と基本的な生活指導に集中し、それ以外の専門的な部分――テスト作成、部活動、カウンセリングなど――は外部に委託する。すでに兵庫県ではそのような仕組みが進み、沖縄でも一部のクラブチームが部活の役割を担い始めています。
保護者としては、次の視点を意識することが重要です:
- 家庭でできる支援は何か?(声かけ、学習環境づくりなど)
- 利用できる制度を把握しているか?(まなびクーポン、奨学金、学校外支援)
- 我が子に合った進路をどう見極めるか?(私立無償化、公立高の内申制度など)
チェックリスト:親としてできる「5つの行動」
- ✅ 学校からのお知らせや市の制度(例:まなびクーポン)を定期的に確認する
- ✅ 塾や学校の先生と連携し、子どもの学力や意欲を見守る
- ✅ 内申点と実力の両面を意識して、高校進学のルートを検討する
- ✅ 学校以外の学びの場(塾、家庭学習、オンライン講座など)を活用する
- ✅ 親同士の情報交換も大切。地域やSNSでつながりを持ち、情報を得る
最後に
公教育は、日本を支えてきた大きな柱です。その価値を守るためには、時代に合わせた見直しと、家庭・地域との連携が欠かせません。
沖縄という地域の特性をふまえ、「子どもを学校に通わせているから安心」ではなく、「何が足りていないのか」「どう補っていけるか」を一緒に考えていきましょう。
子どもたちは、自ら気づいて行動することは難しいものです。
だからこそ、大人が気づき、備え、動くことが大切です。
これからも、私たち沖縄進学塾はその一助となれるよう努めてまいります。
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