中1英語が難しすぎるのはなぜか~沖縄の受験現場から考える、小学校英語と中学校英語の“つながり不足”、高校入試の変化、そして国語力の土台~

本記事要約


小学校英語の教科化以降、中1英語は語彙数の増加や文法の前倒しで確かに難しくなりました。ただ、本当の問題は「教科書が難しい」ことだけではなく、小学校の“聞く・話す”中心の学びと、中学校の“読む・書く・文法”中心の学びがうまくつながっていないことにあります。沖縄の受験現場から、高校入試の変化や国語力の土台の重要性も踏まえ、子どもが英語でつまずかないために必要な視点を整理します。

参考記事の要約

今回話題になっているのは、小学校で英語が教科化された後の中1英語の教科書が、以前よりかなり難しく見えるという問題です。実際、Xでは「導入前と導入後の中1教科書を比べると、平均的な中1にはかなり重いのではないか」という投稿が大きな反響を集めました。教育関係者の間では以前から知られていた話題ですが、ここまで一般の保護者層にも広く共有されたことには大きな意味があります。

参考記事として押さえておきたいのは、このX投稿と、ユーザー提示のYouTube動画「中1英語が難しすぎる…」です。動画では、2020年度に小学校5・6年で外国語が教科化され、3・4年で外国語活動が始まり、2021年度に中学校で新しい学習指導要領が全面実施されたことを起点に、中1英語の負担増を制度面から整理しています。文部科学省の資料でも、小学校5・6年は年間70単位時間、3・4年は年間35単位時間となり、中学校では年間140単位時間程度でそれを引き継ぐ設計になっています。

さらに、語彙(ごい。覚える英単語の量)の目標は、旧課程の中学校約1,200語程度から、現行では中学校1,600~1,800語程度へ増加しました。これに小学校の600~700語程度が加わるため、中学卒業までに扱う語彙は合計2,200~2,500語程度となります。東京書籍の「NEW HORIZON」でも、小学校630語+中学校1,688語で計2,318語という具体例が示されています。

また、2025年度版の教科書では、東京書籍が「紙面にゆとりを持たせる」「現行版からUnitを1つ削減する」「小中接続期の基礎定着をていねいにフォローする」と説明しており、出版社側も小中接続の難しさを意識していることがうかがえます。ただし、文科省が示す語彙数や小学校既習語(きしゅうご。前に学んだことにされる語)の枠組み自体が大きく変わったわけではなく、根本構造はそのままです。

ここから先は、こうした参考記事を踏まえつつ、沖縄で中学受験・高校受験に向き合ってきた現場の立場から、この問題をもう一歩深く考えてみたいと思います。



中1英語が難しくなったのは、気のせいではない

まず、最初にはっきり書いておきたいことがあります。「今の中1英語は、昔より難しくなっているのではないか」と感じる保護者の感覚は、決して大げさではありません。 それは印象ではなく、制度の変化として説明できます。

文部科学省の整理では、現行課程では小学校3・4年で外国語活動、5・6年で外国語を学び、中学校でそれを受けてさらに発展させる設計です。しかし同じ資料には、課題として「小学校の学習経験が十分に生かしきれていない」「学校種間の接続が不十分」とも書かれています。つまり、制度を作った側も、つながりの弱さを課題として認識しているのです。

この点はとても大切です。
「今の子どもたちが弱くなったから難しく感じる」のではありません。
「努力が足りないからついていけない」のでもありません。
学ぶ順番と、中学校が求める前提の間にずれがある。 そこが問題の中心です。

沖縄の現場でも、このずれはかなり強く感じます。
小学校では英語に親しんできたはずなのに、中学校に入ると急に「書けるよね」「読めるよね」「文法も分かるよね」という空気になる。その変化に戸惑う生徒は少なくありません。


いちばん大きいのは、“聞く・話す”中心から“読む・書く”中心への急カーブ

小学校英語では、英語に親しむこと、聞くこと、話すことが重視されています。文科省資料でも、3・4年は「聞くこと」「話すこと」を中心にし、5・6年ではそこに段階的に「読むこと」「書くこと」を加えるとされています。書くことについても、まずは活字体の大文字・小文字を書くこと、音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や表現を書き写すことが基本です。

つまり、小学校では「英語に慣れる」「声に出す」「簡単な表現を使う」が中心であり、中学校の最初から必要になるような、綴りを正確に覚える、文法を整理する、長めの文章を読み取る、といった訓練が十分に積み上がるとは限らないのです。

ところが中学校に入ると、授業は一気に変わります。
be動詞と一般動詞の違い、疑問文、否定文、助動詞、語順、三単現など、「ルールを理解して使う学習」に切り替わります。しかも、教科書では小学校で触れた語や表現が既習扱いされるので、「知っている前提」で先へ進みます。東京書籍の資料では、小学校既習語として630語が整理されています。

ここでつまずく子が出るのは、ある意味で自然です。
小学校では「聞いたことがある」「言ってみたことがある」。
中学校では「書けるよね」「読めるよね」「ルールも分かるよね」。
この飛び方がかなり大きいのです。

沖縄の子どもたちを見ていても、この“段差”は無視できません。
英語が嫌いになったというより、急に求められることが変わって、どう勉強すればいいか分からなくなる。その結果、英語に苦手意識を持ってしまうケースが多いように思います。


現場で見えるのは、英語力の差というより“スタート地点の差”

ここからは、個人的な意見として書きます。

塾の現場にいると、中1の春の時点で、すでに英語の差はかなり大きいです。アルファベットを自信を持って書けない子もいれば、すでに英検の上位級に挑戦できる子もいます。同じ「中1」でも、実際には同じスタートラインに立っていません。

この差は、本人の能力だけでは説明できません。家庭でどれくらい英語に触れてきたか、習い事として英語をしていたか、学校の授業でどれだけ定着したか、読むことや書くことまで丁寧に見てもらえたか。こうした条件の違いが大きく影響します。

沖縄では特に、地域や家庭環境によって教育機会に差が出やすい面もあります。那覇周辺で比較的早い段階から学習習慣が身についている子もいれば、そうでない子もいます。これは本人のせいというより、学びの準備がどこまで整っていたかの差です。

そして怖いのは、勉強習慣がまだ十分でない子ほど、最初のつまずきがそのまま“英語ぎらい”につながりやすいことです。最初に「わからない」が重なると、ノートを取るのも、単語を覚えるのも、音読するのも嫌になってしまう。英語は積み上げ教科なので、最初の数か月の失速が、そのまま1年後、2年後の差になりやすいのです。

これは沖縄の高校受験でも非常に大きな問題です。
中3になってから頑張ろうとしても、英語は途中から一気に取り返しにくい教科です。だからこそ、本当は中1の春がいちばん重要なのです。


高校入試も、たしかに重くなっている――ただし沖縄は「文字数が多い=難しい」とは限らない

この問題は中1だけで終わりません。
むしろ、その先の高校入試でさらに重さが見えてきます。

2025年度の公立高校入試英語について、速読情報館の集計では、リーディングのみの全国平均は約1,740ワード、神奈川県は3,236ワード、東京都は3,049ワードでした。都道府県によって差はありますが、全体として「読む量」が増えていることは確かです。

大学入学共通テストでも、2024年度の英語リーディングは約6,300語とされ、東進は図・表・イラストを用いた複数の情報源から概要・要点を把握する力が求められたと分析しています。つまり、今の英語は「単語を知っているか」「文法を知っているか」だけではなく、情報を整理して、比較して、必要な答えを抜き出す力まで問うようになっています。

この流れを見ると、中学校英語の難化は単独の現象ではありません。
高校入試が重くなり、大学入試がさらに重くなっている。
その流れが、下の学年にまで降りてきている。
そう考えるほうが自然です。

ただし、ここで一つ丁寧に整理しておきたいことがあります。
沖縄の受験を語るとき、「文字数が多いから難しい」と単純に言ってしまうのは正確ではありません。

たしかに、国語でも英語でも、読む量が増えれば負担は増えます。
しかし、難しさは文字数だけで決まるわけではありません。

たとえば国語なら、
抽象的な言葉を具体化する力、
論点を整理する力、
要約する力、
記述で筋道立てて答える力、
こうしたものが多く問われるほど、難度は上がります。

逆に、文字数が多くても、内容が具体的で問い方が素直であれば、そこまで難しくないこともあります。
これは沖縄県の国語にも当てはまります。
沖縄の国語入試は、文字数が多い年があっても、それだけで全国トップレベルに難しいとは限りません。本当に見るべきは、文章の抽象度と、解答に必要な思考の深さです。

この視点は、英語にもそのまま当てはまります。
英語の長文が難しいのは、単に長いからではなく、
情報を整理し、
条件を読み取り、
会話や資料の流れをつかみ、
必要な答えを選ぶ力が必要だからです。

つまり、今の英語入試は、単語や文法のテストであると同時に、情報処理のテストでもあるのです。


英語の問題でありながら、実は“国語力”の問題でもある

ここも、とても大事な点です。

最近の英語のテストは、昔のように単純な和訳や穴埋めだけではありません。案内文、ポスター、ブログ、会話、表、グラフ、複数資料などを読み比べて答える問題が増えています。共通テストでも、チラシ、案内文、ブログ、学校新聞、記事、アンケート結果、物語文、論理的な文章など、文章の種類そのものが多様化しています。

ここで必要になるのは、英語力だけではありません。
「この段落は何を言っているのか」
「どの情報とどの情報を結びつければよいのか」
「筆者の主張と具体例の関係は何か」
そうした読む力、整理する力、比べる力が必要になります。

これは個人的な意見ですが、私はこの部分を、国語力(文章を正確に読む力)の問題として見るべきだと思っています。

もちろん、英単語を覚えることは大切です。文法も必要です。ですが、入試の現場では、英語の文章そのものは読めても、問いの意味がつかめない、情報を整理できない、選択肢の違いがわからないという子が少なくありません。これは「英語がまったく読めない」というより、日本語で考える力が弱いために、英語の問題処理でつまずいている状態だと感じます。

沖縄の受験現場でも、これはかなりはっきり見えます。
英語が極端に苦手というより、問題文の条件を押さえきれない資料の意味を整理できない何を答えればよいかを日本語で理解しきれない。そのために失点している生徒は少なくありません。

この見方は、最近の出題形式とも合っています。英語の試験が、単なる暗記確認から、情報処理型へ移っている以上、母語である日本語の読解力が土台になる、というのは自然な推論です。共通テストのように図表や複数資料を横断して読む問題では、その傾向が特に強いと考えられます。


では、小学生のうちに何を優先すべきか

ここは議論が分かれるところですが、個人的な意見としては、小学校時代にいちばん大事なのは、英語の先取りそのものより、まず日本語の力をしっかり育てることだと思います。

文部科学省の方針として、小学校英語は「慣れ親しむこと」「聞く・話すを中心にすること」に重点があります。これは制度として理解できますし、英語への入り口として意味があります。

ただ、家庭で限られた時間をどこに使うかを考えたとき、全員が高度な英語先取りをする必要はない、と私は考えます。

沖縄の家庭でも、忙しい毎日の中で、すべてを完璧にやるのは簡単ではありません。
だからこそ、優先順位が大切です。

むしろ大切なのは、
毎日少しでも本を読むこと。
説明文をきちんと読むこと。
主語と述語を意識して日本語の文章を理解すること。
言われたことをそのまま受けるだけでなく、自分の言葉で言い換えること。
こうした土台です。

その上で、余裕があれば、
アルファベットを正確に書く。
よく出る英単語を少しずつ覚える。
音読で英語の音と文字を結びつける。
この順番で十分だと思います。

英語が苦手になりやすい子の多くは、最初から難しい長文が読めないからではありません。
単語の形があいまいで、
語順のルールがあいまいで、
日本語で問題文を整理する力も弱い
この三つが重なって苦しくなります。

だから対策も、派手なものより基本です。
沖縄の教育を考えるときも、特別な裏技より、当たり前の土台をどこまで丁寧につくるかが大事だと思います。


保護者が今日からできること

保護者の方に伝えたいのは、「家で英語を教え込まなければ」と焦らないでほしい、ということです。

まず見てほしいのは、次の三点です。

第一に、日本語の読書や会話が足りているか
短くてもよいので、毎日文章に触れる時間があるか。学校の出来事を、自分の言葉で順序立てて話せるか。これが後の教科全体を支えます。

第二に、アルファベットと基本単語があいまいなまま放置されていないか
ここは中1の最初の失点源になりやすい部分です。難しい英語より、まず「正確に書ける」「見て読める」を優先したほうがよいです。

第三に、英語を嫌いにさせないこと
最初から満点を目指すより、「昨日より読めた」「5個書けた」「音読できた」を積み上げるほうが、長く伸びます。

沖縄の保護者の方と話していると、「英語を先取りしたほうがいいですか」と聞かれることがよくあります。もちろん準備は大事です。ですが、私はいつも、急ぎすぎるより、土台を整えることのほうが大事ですとお伝えしています。


学校と塾に求められること

学校には、やはり接続の設計が必要です。
「小学校でやったはず」ではなく、
「本当に定着しているか」を確かめる。
そのうえで、読む・書くの橋渡しを丁寧にする。
これが欠かせません。

塾には、単なる先取りだけでなく、中1の最初の転ばせない指導が求められると思います。特に、アルファベット、音と文字の一致、基本語の綴り、be動詞と一般動詞の区別。このあたりを雑にせず、最初に整えることが大切です。

沖縄でも、高校受験の情報ばかりが注目されがちですが、本当はその前段階、つまり中1の春をどう乗り切るかが、その後の3年間を大きく左右します。現場で感じるのは、目立つ難関校対策だけでなく、こうした基礎の議論こそ、もっと地域で共有されるべきだということです。そうした発信を丁寧に積み重ねることが、結果的に沖縄の受験情報の質を上げ、教育の議論を深めることにつながるはずです。


まとめ――「昔に戻す」より、「つながる形に直す」

今回の議論を見ていると、「昔の英語に戻したほうがよい」という声が出る気持ちもよくわかります。けれども、現実には、社会全体で英語に求められる力は広がっています。文科省も、小中高を通じた外国語教育の改善を進め、次期学習指導要領の議論でも教育課程の在り方を検討しています。

だから必要なのは、単純に昔へ戻ることではなく、小学校から中学校へ、そして高校へ、無理なくつながる形に直すことだと思います。

中1英語が難しい。
それは、たしかに事実です。
でも本当に見なければいけないのは、教科書の厚さや単語数だけではありません。
その奥にある、接続不全(学校段階どうしのつながり不足)入試全体の高度化、そして日本語の読解力の土台です。

英語を学ぶことは大切です。
けれど、その土台になるのは、やはり母語である日本語の力です。
小学生のうちに、読み、考え、言葉で整理する力を育てる。
そのうえで、必要な英単語と基本文法を積み上げる。
私は、その順番がいちばん現実的で、子どもにも、そして沖縄の教育現場にも合った道ではないかと思います。


参考記事

参考記事1:X投稿「1枚目が小学校英語導入前の中1の教科書…」
https://x.com/TYPFNJvx94LvMko/status/2033134599480791547

参考記事2:YouTube動画「中1英語が難しすぎる…」
https://www.youtube.com/watch?v=ejhulWjQ-F0

参考資料:文部科学省「外国語教育について」
https://www.mext.go.jp/content/20230106-mxt_soseisk02-000026908_3.pdf

参考資料:文部科学省「外国語活動・外国語編」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_011.pdf

参考資料:東京書籍「NEW HORIZON」関連資料
https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/chu/eigo/

参考資料:2025年度公立高校入試英語ワード数分析
https://www.sokunousokudoku.net/media/?p=13425

参考資料:2024年度大学入学共通テスト英語リーディング全体概観
https://www.toshin.com/kyotsutest/2024/about_reading.html


執筆者情報

比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。講師歴20年以上。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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