学校と塾の違いを正しく理解していますか?教師の「実践研究」が子どもの未来を変える理由

本記事要約

学校と塾は役割が異なり、学校は基礎学力や興味関心を育て、塾は限られた時間で受験対策に特化する方が合理的である。参考論文は、教師が自分の授業を研究・改善する「実践研究」によって授業の質と指導力が向上すると示す。因数分解のように日常で直接使わない内容も、問題を分解して考える力を育てる点で意味がある。技能教科も含め、学びの目的を家庭が理解し子どもに伝えることが、成長を最大化する鍵となる。


参考記事


藤田 卓郎「実践研究のすすめ―教師が実践研究を行う意義と研究を始めるコツ」
(福井工業高等専門学校/J-STAGE)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/keles/5/0/5_22/_pdf/-char/ja

この論文が言いたいこと

この論文のメッセージは、驚くほどシンプルです。
教師が自分の授業を「研究」することで、授業の質が上がり、教師自身も成長する。
ここで扱われている「実践研究」とは、大学の研究者が行う研究だけを指しません。
現場の先生が、自分の授業や指導を観察し、記録し、振り返り、改善していく取り組みを含みます。

実践研究とは?

実践研究:先生が「自分の授業」を材料にして、うまくいった点・うまくいかなかった点を整理し、次の授業改善に活かす研究。
(注釈)実践=実際の授業や指導のこと/研究=理由や仕組みを探って、次に活かすこと。

論文のポイントは、「研究のやり方」は特別な人だけのものではない、という立場です。
問い(疑問)を立てて、データ(授業の記録や生徒の反応)を集めて、考える。
この基本は、学術研究(大学などの研究)と同じ流れだ、と述べています。

学術研究との違い:でも“やること”は似ている

論文の整理に沿って、違いをわかりやすく言い換えると次の通りです。

  • 学術研究:一般化できる理論や知見(「こういう傾向がある」)を作ることが主目的
  • 実践研究:目の前のクラス・生徒のために、授業を良くすることが主目的

ただし、論文が強調するのはここです。
問いを立てる→記録する→振り返る→改善するという点では、実践研究も立派な“研究”になりうる。

論文が示すメリット:教師が研究すると何が起きる?

論文では、実践研究により次のような効果が整理されています。

  • 授業を客観的に見られる(注釈:主観だけでなく、事実に基づいて見ること)
  • 改善点が明確になり、授業の質が上がる
  • 教師としての手応え・自信につながる

そして始め方としては、まずは他の実践研究を読み、「自分は何を知りたいのか」を言語化することが勧められています。
“研究”と言うと難しそうですが、実は疑問を丁寧に扱うことから始まる、というわけです。


学校教育と学習塾の差は「授業コマ数」にある

個人的な意見として、学校教育と学習塾の最も大きな差は授業コマ数(=学習に使える時間量)にあります。
この「時間量」の差は、気合いで埋まりません。構造の問題です。

文部科学省が示す中学校の標準授業時数(単位時間=50分)では、各学年の総授業時数は1015とされています。
出典:文部科学省「中学校学習指導要領(関連資料)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/

一方、一般的な塾の授業時間は、週2回〜3回、1回あたり1.5〜2時間程度という家庭が多いでしょう。
ここは塾・地域・学年で幅があるため断定はしませんが、学校(年1015コマ)と同じだけの時間を塾で確保するのは現実的ではありません。

だからこそ、塾は「学校の代わり」ではなく、限られた時間で効果を出す“特化機関”として位置づける方が、子どもにも家庭にも優しいと考えます。

塾はコマ数が少ない。だから受験に特化してよい

個人的な意見として、学習塾は受験に特化するほど価値が高まると思っています。
理由は単純で、時間が限られているからです。

塾が強みを発揮しやすいのは、たとえば次の領域です。

  • 入試問題の分析(どこが出やすいか、どう点が入るか)
  • 得点戦略(どの順番で解くか、捨て問の見極め)
  • 弱点補強(ミスの型を潰す、短期で伸びる単元に集中)

逆に言えば、塾が「人生のすべての学び」を背負おうとすると、時間が足りず、家庭も子どもも疲弊しやすくなります。
塾は“全部”ではなく“ここ”を担当する。ここが明確なほど、結果も出やすい。これは精神論ではなく、設計の話です。

学校に求めるべきこと:教師が実践研究し、学問の面白さを届けてほしい

一方で、学校教育にこそ期待したい役割があります。
それが、参考論文が扱う教師の実践研究です。

学校の先生は、日々の授業の中で、子どもたちの反応をいちばん近くで見ています。
その現場で「なぜ伝わらなかったのか」「どこでつまずいたのか」を丁寧に拾い、次の授業に反映できるのは、まさに現場の教師です。

実践研究という視点が入ると、授業は次の方向へ動きやすくなります。

  • 子どもの理解の“ズレ”を見つけ、説明を改善できる
  • 教材や板書、問いかけを見直し、学びを深められる
  • 「できた/できない」の先にある理由を扱える

そして何より、学校にしかできない価値は、学問の楽しさや興味づけを、幅広く体験させることだと思います。
塾は時間が短い。だから受験の優先度が上がる。
学校は時間が長い。だから世界を広げる役割が担える。
この分担は、とても自然です。

「それが将来、何に役立つのか」—この説明はやはり重要

中学生の質問で、もっとも誠実で、もっとも本質的な問いの一つがこれです。

「これ、将来何に役立つの?」

この問いに対して、大人が「黙ってやれ」と返してしまうと、勉強は作業になりやすい。
個人的な意見として、ここは学校教育が最も力を入れていいポイントだと思っています。

もちろん、すべての単元に“即効性のある用途”があるわけではありません。
しかし、用途があるかどうかだけではなく、学び方が脳の使い方を鍛えるという視点が、子どもを救うことがあります。

例:因数分解は日常で使わない。でも「問題解決の型」は残る

たとえば数学の因数分解。
日常生活で、一般の人が「(x+3)(x-2)」のように式を分解する場面は多くないでしょう。

ただ、因数分解が鍛えるのは「式変形」だけではありません。
個人的な意見として、因数分解の本質は、次の思考訓練にあります。

  • 複雑なものを分解する
  • 共通点(共通因子)を見つける
  • シンプルな形にして扱いやすくする

この「分解→共通点→単純化」は、仕事や生活の問題解決でも使います。
たとえば、人間関係のトラブル、家計の赤字、勉強の成績不振。
原因が絡み合っているものを、要素に分けて、共通原因を探して、対策を打つ。
まさに因数分解的な思考です。

なお、PISA(OECDの国際学習到達度調査)でも、数学の評価は単なる計算力ではなく、現実の文脈で数学を使って考え、判断する力(数学的リテラシー)を測る枠組みを取っています。
出典:OECD “PISA 2022: Mathematics Framework”
https://pisa2022-maths.oecd.org/ca/index.html

(注釈)リテラシー=知識を“使って”考えたり表現したりする力。

技能四教科(音楽・美術・体育・技術家庭)は、受験に直結しなくても価値がある

ここは誤解が生まれやすいところです。
中学生の現実として、「受験に出る科目」が優先されがちなのは理解できます。
ただ、個人的な意見として、技能四教科を“軽いもの”として扱うのは危険だと思います。

なぜなら、技能教科は「点数」よりも、人生を豊かにする基礎体力に関わるからです。
文化庁の資料でも、文化芸術体験が子どもにとって重要な資質(創造性、感性、コミュニケーション等)形成に関わる趣旨が述べられています。
出典:文化庁(調査研究報告)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/shinshin/kodomo/ikuseijigyo_kensho/pdf/94040401_01.pdf

(注釈)創造性=新しい考えや工夫を生み出す力/感性=感じ取る力。

音楽や美術、体育、技術家庭は、得点のためだけではなく、
「自分の好き」「集中できる」「手を動かす」「体で覚える」などの経験を通じて、
勉強とは違う回路で自己肯定感や生活力を支えてくれます。

学校と塾の棲み分けは、保護者が理解し、子どもに“目的”として伝えるべき

学校と塾は、対立関係ではありません。
本来は、役割分担ができるパートナーです。

そのために重要なのは、保護者が「目的」を整理し、子どもに伝えることです。
たとえば、次のように言葉にするだけで、子どもの学びは安定しやすくなります。

  • 学校:基礎を広く学び、興味を増やす場所
  • 塾:受験で勝つために、限られた時間で伸ばす場所

OECDも、家庭の関わり(保護者の学習支援や学校との関係)が、子どもの学習や社会性に関連することを整理しています。
出典:OECD “Parental involvement”
https://gpseducation.oecd.org/revieweducationpolicies/

(注釈)関連=「一緒に動く傾向がある」こと。原因が100%それだと断定する意味ではありません。

この論文が学校教育に与える示唆は「素晴らしい」—ただし、実行のための環境づくりが必要

個人的な意見として、この論文が投げかける学校教育への示唆は素晴らしいと思います。
教師が実践研究を行い、授業を良くし、子どもが学問に興味を持つ。
この循環が回れば、塾に頼り切らなくても、学力は土台から上がっていきます。

ただ同時に、現実の学校現場が忙しいことも、私たちは理解する必要があります。
実践研究は「やる気」だけでは続きません。
記録する時間、共有する場、同僚と改善する文化。
そうした環境が整ってこそ、研究が教育の力になります。

沖縄の受験を見てきて思うこと(控えめに)

最後に少しだけ。個人的な意見として、沖縄では「制度理解」と「学習設計」で差がつきやすい面があります。
どの高校・どの進路を目指すかによって、必要な準備が変わることは少なくありません。
だからこそ、家庭が情報を整理し、学校と塾の目的を分けることが、子どもの負担を減らします。

私自身も、沖縄の中学受験・高校受験について日々相談を受ける立場として、
「勉強量」ではなく「設計」で勝てる家庭を増やしたいと思っています。
(ここは大々的に言う話ではありませんが、検索してたどり着いた方には、同じテーマで役立つ情報が他にもあるはずです。)

教育は“全部やる”より“分けて伸ばす”ほうが強い

この記事の結論は一文です。

学校は「学問の面白さ」と「基礎の広さ」を育て、塾は「受験の得点力」を磨く。保護者はその目的を子どもに伝える。

そして、その中心にあるのが、参考論文が示した「実践研究」です。
授業を研究し、改善し、学びを深くする。
教師が学び続ける学校は、子どもの未来を確実に明るくします。


中学生向け:ここだけ覚えよう(超要点)

  • 学校は「広く学ぶ」場所
  • 塾は「受験で点を取る」場所
  • 勉強は「考え方」を鍛えるトレーニング
  • “なんで学ぶの?”を聞いていい。大人は答える努力をする

執筆者

比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。講師歴20年以上。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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