学力低下は「スマホだけ」が原因ではない――授業の変化と家庭の設計で差がつく時代へ

本記事の要約


沖縄の中学生の学力低下は「スマホ」だけでは説明できず、協働学習(グループワーク)偏重や教員の働き方改革による授業・添削時間の減少で、学力の負荷が学校から家庭へ移りつつあります。文科省データも教科差と家庭環境差(SES)の拡大を示唆。本記事は、家庭で今日からできる対策として「朝食時のニュース100字要約」「語彙力を増やす会話」「入試問題100字要約」を提案し、AI時代に必要な思考力の土台づくりを解説します。

参考記事の要約

今回の【参考記事】は、「小中学生の学力低下」をめぐり、文部科学省の資料で示されたスマホ等の生活要因だけでなく、2020年度以降に重視された探究学習・協働的学習(グループワーク)の“運用の難しさ”が、基礎学力の定着を弱めている可能性を現場が指摘している、という内容です。

記事の骨格は次の通りです。

  • 文科省・国立教育政策研究所の「経年変化分析調査」の結果として、小学校国語・算数、中学校国語・英語でスコア低下が見られた(一方、中学数学は大きな変化が見られない)。
  • さらに、社会経済的背景(SES)(=家庭の経済・文化的環境など、学習環境に影響しやすい要素をまとめた指標)で、低い層ほどスコア低下が大きいことが示され、格差の問題が浮き彫りになった。
  • 文科省側の概要資料では、学校外の勉強時間の減少や、テレビゲーム等の使用時間増とスコアの関係が示されている(ただし「原因の断定」ではなく、関連の示唆として扱われている)。
  • 参考記事は、現場の声として、グループワーク中心の授業では「先生が個々の理解度を把握しにくい」「分かったふりを見抜きにくい」「基礎が弱い子が“お客さん”化しやすい」というリスクを描き、結果として塾に通える/通えないで差が広がると問題提起している。

参考記事(マネーポストWEB):
「小中学生の学力低下は文科省が示すように『スマホが原因』なのか?」(moneypost.jp)

私たちは「原因探し」より先に、“学力の負荷がどこへ移動したか”を見るべきだ

ここからは、沖縄の受験現場を日々見ている立場としての所感(※個人的な意見を含みます)です。参考記事の問題提起にはうなずける点が多い一方で、私は「スマホか/グループワークか」という二択で議論すると、現実の構造を取り逃がすと感じています。

いま起きている変化を、あえて一言でまとめるならこうです。

学力を支える“負荷(がんばりどころ)”が、学校から家庭へ移動している。

この“負荷の移動”を理解できると、ニュースの見え方が変わります。
「学校が悪い」「先生が悪い」ではありません。社会全体の設計が変わっているのです。

沖縄の現場感:近隣中学でも「落ちた」と感じる場面は増えた

小禄中・金城中・鏡原中など、那覇周辺でも「学力が下がってきた」という声は確かに増えました(※ここは統計として提示できないため、現場観測=個人的意見です)。

特に、「担任制の廃止」「定期テストの廃止」といった制度変更は、学力の変化が“見えにくくなる条件”を増やしやすいのも事実だと思います。なぜなら、定期テストは良くも悪くも「できている/いない」を定点観測する装置だからです。

ただし、誤解が出ないように言い切ります。制度変更そのものは、子どもの多様性への配慮や、教員の負担軽減など、目的があって行われます。問題は、制度が変わった後に、

  • 基礎学力(読み・書き・計算)をどこで、どう補うか
  • 評価と振り返りを何で代替するか

という“学力のインフラ設計”が、家庭に十分伝わっていないことです。

参考記事の主張は妥当か

協働的学習(グループワーク)は、うまく回れば確かに強い学び方です。
ただし、条件があります。

  • 土台(語彙・計算・基礎知識)がある
  • 司会進行(ファシリテーション:話し合いを前に進める技術)ができる
  • 先生や補助スタッフが、理解度を見える化できる

この条件が揃って初めて「伸びる」学びになります。参考記事が言う通り、公立の普通の教室で、先生1人が複数グループを同時に見て、全員の理解度を精密に把握するのは、現実的に難しい。

だから私は、協働的学習の是非を語る前に、順番を確認すべきだと思います。

土台 → 練習 → 小テスト(確認) → その上で協働学習

この順番なら、協働学習は「仕上げ」として効きます。逆に土台が薄いまま協働学習が増えると、見た目は賑やかでも、実は“定着”が弱い子が増えやすい。これは現場の実感としても納得感があります。

「学力低下=全教科一律に崩壊」ではない

文科省・国立教育政策研究所が公表した概要資料では、平成28年度・令和3年度・令和6年度(PBT実施校)の比較として、

  • 小学校:国語・算数
  • 中学校:国語・英語

でスコア低下が見られ、中学校数学はスコアの大きな変化が見られないと整理されています。

さらに、SESが低い層ほどスコア低下が大きいことも示されています(中学校英語を除く)。

つまり現状は、「全部が同じように落ちている」というより、落ち方に偏りがあり、家庭環境の差が効きやすくなっている――この読みが、データとしても筋が良いです。

最大の変化は「教員の働き方改革」で“学校の可処分時間が減った”こと

ここは重要な論点です(※個人的意見を含みます)。先生のワークライフ・バランス(=仕事と生活の両立)は否定されるべきものではありません。むしろ必要です。

実際、日本の教員の労働時間が長いことは国際調査でも指摘されており、たとえばOECDの教員調査(TALIS)では、日本の教員の勤務時間が国際平均より長い傾向が報じられています。

また文科省側も働き方改革を進め、在校等時間(学校にいる時間)の縮減を目標に各地の取組を促しています。
ここで起きる現象はシンプルです。

  • 先生の時間が減る
  • これまで“先生の頑張り”で成立していた個別対応や添削が減る
  • その分、基礎の穴が家庭で埋まるかどうかが、学力差になる

私はこれを「学校から家庭への負荷移動」と呼びたいです。

国語力低下は“時代の流れ”でもある

国語の記述で無解答が多い、という話題は保護者の不安を強く刺激します。参考記事でも国語の弱さが象徴として扱われています。

ここに関して私は、「学校の授業改善」だけでは限界があると考えています(※個人的意見です)。理由は、子どもを取り巻く情報環境が変わったからです。

  • ショート動画:短い・速い・結論先出し
  • 生成AI:書く前に文章が出る

この環境では、「自分の頭で文章を組み立てる筋トレ」を、家庭が意識して作らないと落ちやすい。これは責める話ではなく、時代への適応の話です。

家庭で何ができる?答えは「勉強は学校で完結しない」と親子で合意すること

ここから先は、実務の提案です。結論はまずこれです。

学校は“導入の場”。身につける(定着)は、家庭でやる。

「定着(ていちゃく)」=時間がたっても自力で解ける状態(注釈)。この合意がある家庭は、塾の有無に関係なく強いです。

そして、家庭でやることは“難しい教材”である必要はありません。むしろ、毎日できる小さな習慣が効きます。

家庭でできる「国語力」最短ルート

おすすめは、朝食時のニュース要約です。理由は3つあります。

  1. 生活習慣に組み込みやすい(継続できる)
  2. 語彙が増える(国語の土台)
  3. 要約=抽象化、具体例=具体化、両方鍛えられる

やり方(家庭版):

  • 親がニュースを1本選ぶ(社会・経済・スポーツ何でもOK)
  • 子どもが「何が起きた?」を100字で書く(スマホのメモでOK)
  • 親は添削より先に、質問を2つだけする
    • 「それで、誰が困る/助かる?」
    • 「原因は何だと思う?」

100字制限にするのは、短いほど要点を抜く力が鍛えられるからです。

学力の土台は「語彙力」

語彙(ごい)=言葉のストック(注釈)。語彙が少ないと、文章が読めない → 意味が取れない → 問題が解けない、という連鎖が起きます。逆に語彙が増えると、国語だけでなく理科・社会・英語にも波及します。

家庭でできる語彙強化は、次の3点セットが現実的です。

  • ニュース要約(毎日)
  • 読書(量より“毎日10分”)
  • 会話で言い換える(例:「やばい」→「不安/驚いた/困った」など)

じっくり伸ばす上級編

「入試問題を100字で要約する」は、受験対策としても汎用スキルとしても強いです。

  • 抽象化(ちゅうしょうか)=バラバラをまとめる(注釈)
  • 具体化(ぐたいか)=ぼんやりをはっきり言う(注釈)

この往復ができる子は、記述も面接も伸びます。沖縄の受験でも、最終的に強いのはこのタイプです(※個人的意見ですが、現場の手触りとしては確信に近い)。

AI時代の勉強は「やらない方向」に流れやすい。だから“使い方”で差がつく

AIが普及すると、子どもは「勉強しなくても何とかなる」と感じやすくなります。これは自然です。

ただし、ここで差がつきます。

  • AIを使って「考える量」を増やす子
  • AIに任せて「考える回数」を減らす子

この差は、将来の仕事の選択肢にも影響します。さらに、近年「フィジカルAI(現実世界で動くAI)」がトレンドとして語られ、ロボットや製造・物流領域への波及が話題になっています。

だからこそ、親子で今やるべきは「AIを禁止する」ではなく、

  • 要約する
  • 根拠を確認する
  • 自分の意見を短く言う
  • AIに“質問できる”ようになる

という基礎を作ることです。

学校改革は続く。だから家庭は「学力のOS」を先に入れよう

最後に整理します。

  • 文科省資料では、教科によってスコア低下の傾向に差があり、またSESによる差の拡大も示唆されている。
  • 参考記事が指摘する「協働的学習の運用リスク」は現実にあり得る(先生1人で全班の理解度把握は難しい)。
  • ただ、最大の構造変化は「働き方改革」で学校の可処分時間が変わり、学力の負荷が家庭へ移動している点(※個人的見立て)
  • だから家庭が、毎日できる小さな習慣(ニュース100字要約・語彙強化・入試要約)で、学力の土台を先に作るべき

沖縄の受験は、制度も学校運営もこれから変わり続けます。その中で、親子が今日からできる最も現実的な戦略は、家庭で“学力のOS(基本動作)”を入れることだと思います。

執筆者情報

比嘉 大(ひが たけし)沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。講師歴20年以上。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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