受験当日に「頑張れ」は本当に逆効果?沖縄の受験現場から考える“安心”を生む親の言葉

本記事要約


受験当日に親がかける言葉に正解はありませんが、「頑張れ」よりも、これまでの努力をねぎらう言葉が子どもの心を安定させることが多いとされています。本記事では参考記事を踏まえつつ、沖縄の受験現場の視点から、受験当日の安心は一言で作られるのではなく、併願校の準備や「落ちた場合」の話し合い、当日の動きのイメージトレーニングなど、受験日までの日常の積み重ねで生まれると論じます。結果ではなく過程を認め、「いつも通り」に戻す親の関わりが、受験生の力を引き出す鍵であることを伝えます。

参考記事の要約

今回の参考記事は、東洋経済オンラインに掲載された
「受験当日に『頑張れ』はNG? 東大生が玄関先で親に言われて“心が軽くなった”意外な一言」です。

▶ 参考記事リンク:https://toyokeizai.net/articles/-/933872

記事では、大学受験当日の朝、親が子どもにどんな言葉をかけるべきかという悩みに対し、「これを言えば必ずうまくいく」という万能な正解はないとしたうえで、多くの東大生が心が軽くなったと振り返る言葉として、「とにかく、ここまでお疲れ様」がよく挙がったことを紹介しています。

「頑張れ」や「受かれ」といった結果に焦点を当てる言葉は、すでにプレッシャーを抱えている受験生にとって負担になり得ます。そこで、合否に触れず、過程(努力)を肯定する言葉をかけることが、子どもの心を安定させ、力を出し切りやすくする――というのが記事の主な趣旨です。

親ができる最大の役割は、「条件付きの応援」ではなく、「無条件の承認」を示すこと。つまり、結果がどうであれ「あなたの価値は変わらない」と伝えることが、子どもを支える言葉になり続ける、と述べられています。

「安心させる言葉」だけで、受験は本当に安定するのか

ここからは、沖縄で受験指導に携わってきた立場から、個人的な意見として、このテーマをもう一段深く考えてみます。

まず、参考記事の主張である「安心させる言葉が大切」という点には賛成です。受験当日の子どもは、すでに十分な緊張(きんちょう:体や心が強くこわばること)を抱えています。そこに結果を求める言葉を重ねると、かえって負担になることがあるのは、現場でもよく見られます。

ただ一方で、受験当日の安心感は、その日の一言で作られるというより、受験日までの日常の中で作られる側面が大きいとも感じています。

「非日常」を「日常」に落とし込めるかどうか

受験は、会場も空気も時間の流れも、普段とは違う非日常です。環境が変わると、人は思考の負担(にんちふか:考えるのに必要な力や余裕)が増え、普段通りに動けなくなることがあります。

だからこそ、当日に力を出せる生徒ほど、受験という非日常を「いつも通り」に近づける工夫をしています。たとえば、前日から当日朝の動きを決め、休憩時間の過ごし方まで含めて「いつもの流れ」を作っているケースです。

欲が先行すると、人はリズムを崩す

「受かりたい」「落ちたくない」という気持ちは自然です。しかしその気持ちが強すぎると、強迫観念(きょうはくかんねん:〜しなければならないと自分を追い込む考え)になり、問題を解くリズムが狂うことがあります。

一問でもつまずくと、焦りが連鎖してしまう。これは受験本番でよく起こる現象です。大事なのは、難しい問題を落としても「次へ切り替える」ことですが、強迫観念が強いほど、その切り替えが難しくなります。

沖縄県高校入試の具体例|最初のつまずきが連鎖することも

沖縄県の高校入試は、一般に1日目:国語・理科 → 昼休憩 → 英語/2日目:社会・数学という流れです。

ここで想像してみてください。もし1日目の国語が「例年より難しい」と感じた場合、そこで動揺(どうよう:心がゆれて落ち着かなくなること)してしまう生徒がいます。

「国語がうまくいかなかった。理科で取り返さないと。英語で挽回しないと。」こうして、できなかった問題を補おうとして焦り、結果的に次の科目でもリズムを崩してしまう。これは現場で何度も見てきたパターンです。

安心の土台は「併願」と「覚悟」

高校受験に限って言えば、受験生にとって最大の安心材料は、落ちたとしても大丈夫な併願(へいがん:別の学校も受けておくこと)を持っていることです。

併願先を「ただ受ける」のではなく、その学校のことをしっかり調べ、「そこに進学しても納得できる」状態を作る。ここまでできている生徒は、当日の焦りが少ない傾向があります。

中学受験なら、公立中学校も含めて選択肢を整理すること。大学受験なら、現役にこだわるのか、浪人(ろうにん:もう1年勉強して受け直すこと)も含めるのか――こうした“もしも”を事前に話し合えるかどうかが、安心に直結します。

「落ちたらどうする?」を話せる家庭は強い

「縁起でもない」「気が緩む」と思われがちですが、実際は逆です。落ちたときの行動を具体的に決めている生徒ほど、当日に焦りにくいと感じます。

一番考えたくないことを先に考えておくと、当日は「最悪のケース」への恐怖が薄れます。恐怖が薄れると、切り替えが早くなり、結果として実力を出しやすくなります。

やり切った勉強と、イメージトレーニング

もう一つ大切なのは、本人の中に「やれるところまでやり切った」という感覚があるかどうかです。これは誰かが与えられるものではなく、本人が積み上げて得る自信です。

加えて、当日の日程をイメージトレーニング(本番の動きを頭の中でくり返し再生すること)しておくと、受験が「初めての出来事」ではなくなり、落ち着きやすくなります。

だから当日の言葉は「いつも通り」でいい

ここまで準備ができているなら、当日、親がかける言葉はむしろシンプルでよいと思います。

「いつも通りにやってきなさい」

この一言は、「もう準備はできているよね」という信頼と、「結果ではなくプロセスを見ている」という承認を同時に伝えられます。

受験当日、親は“何もできない”からこそ

受験当日、答案を書くのも、問題と向き合うのも子ども自身です。親は代わって戦うことはできません。だからこそ、受験日に慌てて言葉を探すのではなく、受験日までの日常の中で、安心を育てることが大切だと思います。

その積み重ねが、玄関先の一言ににじみ出ます。受験当日だけの“特別な言葉”より、日々の会話の延長線上にある“日常に戻す言葉”のほうが、子どもを落ち着かせるはずです。

「安心」は、日常からしか生まれない

参考記事が示すように、「結果」ではなく「過程」をねぎらう言葉は、受験生の心を軽くします。これは高校受験・中学受験でも同様でしょう。

そして、私の個人的な意見として付け加えるなら、受験当日の安心感は、その日の一言で急に作られるものではなく、受験日までの準備・併願の整理・“落ちた後”の話し合い・当日のイメトレといった「日常の積み重ね」で作られる面が大きいと感じます。

だからこそ、親がかける言葉もまた、“受験日に”探すのではなく、“受験日までに”育てておく。そうして迎えた当日の一言が、子どもを「いつも通り」に戻してくれるのだと思います。

執筆者情報

比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。講師歴20年以上。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。
「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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