参考記事の要約
今回ご紹介するのは、サウジアラビア・キングサウード大学の研究チームが2025年8月に発表した研究成果です(出典:LLMへの指示が得意な人は脳の働きが違う)。 この研究では、大規模言語モデル(LLM)への指示が上手な人とそうでない人の脳活動に違いがあることが、初めてfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて科学的に確認されました。
研究の概要
– 22人の参加者を対象に、プロンプト力を測る独自尺度「PELS」を開発。
– スコアに基づき「熟達者」と「中級者」に分類。
– 安静時fMRIを用いて脳のネットワーク活動を比較。
主な発見
1. 低周波帯域の優位性:熟達者は神経活動が安定しており、効率的に情報処理を行っていた。
2. 脳領域間の結合強化:言語処理に関わる左中側頭回と、計画や抽象的推論に関わる左前頭極の結合が強化されていた。
3. 効率的な神経活動:不要な揺らぎが少なく、落ち着いた思考状態で効率よく処理できていた。
意義と展望
– プロンプト力は単なるスキルではなく、神経科学的に裏づけられる能力であることを示唆。
– 教育や職業訓練に応用できる可能性がある。
– ユーザー特性に合わせたAIインターフェース設計にもつながる。
AIが勉強不要論を加速させる?
最近「AIがあるから勉強は必要ないのでは」という声を耳にします。確かにAIは正確に答えを出してくれるし、参考書を丸ごと要約することも可能です。しかし研究が示したのは「AIを上手に扱える人ほど、言葉の理解力や論理的思考力が高い」という事実です。つまり、AIを使いこなすには結局人間自身の学力や思考力が必要なのです。
学校での勉強と脳の働き
受験勉強で鍛える力は、そのまま今回の研究結果と重なります。
– 国語の読解や英作文 → 言葉の意味を正確に把握する力(左中側頭回の働き)
– 数学や理科の解法 → 論理の筋道を立てて考える力
– 模試や答案の見直し → 「なぜ間違えたか」を振り返るメタ認知力(左前頭極の働き)
これらはすべて、AIに適切な指示を出す「プロンプト力」につながります。
AIと依存の違い
私は常々、生徒に「AIは活用するものであって、依存するものではない」と伝えています。インターネットが普及したときも、検索の仕方を知らない人は情報にアクセスできず、デジタル格差が生まれました。AIでも同じことが起きます。「どんな言葉で聞くか」によって返ってくる答えが変わる。だからこそ、語彙力や論理的思考力を養っておかないとAIを使いこなせません。
学歴とAI活用の関係
「中卒でも社長になれる!」という話は確かにあります。しかしそれは例外であり、多くの人にとっては基礎学力を鍛えた方がAIを使いこなせる確率が高いのです。昔から「地頭がいい人」はいましたが、その差を埋めるために学問があり、勉強があります。AI時代もこの構造は変わりません。
これからの学びの意味
AIが進化すればするほど、勉強しない人との「知の格差」は広がります。今後は努力して基礎を積み重ねた人がAIをうまく活用し、そうでない人との差はさらに大きくなるでしょう。 最終的に、人間はAIに従属する可能性すらあります。しかし、それを避けるためにはAIと対等に扱える人間になることが必要です。
中学生・保護者へのメッセージ
AIの進化は止まりませんが、安心してください。学校での勉強や日々の努力は、AI時代にも価値を持ち続けます。中学生の皆さんにとって、いまの勉強は「受験のため」だけではありません。将来AIを味方につけるための力を育てる訓練でもあるのです。
保護者の皆さまへ。
「子どもに勉強をさせる意味はあるのか」と迷う瞬間もあるかもしれません。しかし今回の研究は明確に答えをくれました。勉強は未来のAI社会で子どもを守る武器になると。
まとめ
– AIをうまく扱える人は、語彙力・論理的思考力・メタ認知力が高い。
– これらは受験勉強や学校教育で培われる。
– AIがどれだけ進化しても、人間が考える力を持たなければ使いこなせない。
– 学び続けることで、AIと対等に協働できる人材になれる。
おわりに
今回の研究結果は、教育に携わる私にとって大きな励みになりました。沖縄の中学受験・高校受験の現場で生徒たちに伝えたいのは、「勉強はAI時代の最高の投資だ」ということです。これからも沖縄から発信し続け、生徒たちがAIを味方につけられる未来を一緒に築いていきたいと思います。
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