本記事要約
学校と塾は役割が異なり、学校は基礎学力や興味関心を育て、塾は限られた時間で受験対策に特化する方が合理的である。参考論文は、教師が自分の授業を研究・改善する「実践研究」によって授業の質と指導力が向上すると示す。因数分解のように日常で直接使わない内容も、問題を分解して考える力を育てる点で意味がある。技能教科も含め、学びの目的を家庭が理解し子どもに伝えることが、成長を最大化する鍵となる。


参考記事
【教師にとって実践研究はどのような成長をもたらすのか?】本資料は、この問いに答えるために、英語教育における実践研究の定義、学術研究との違い、具体的事例、さらに実践研究が教師の成長にどのように寄与するのかを多角的に整理したものです。実践研究とは、日々の授業で生じる問いを教師自身が研… pic.twitter.com/oPFE8mmvtu
— 教育探究ひろば (@tankyuhiroba) February 22, 2026
藤田 卓郎「実践研究のすすめ―教師が実践研究を行う意義と研究を始めるコツ」
(福井工業高等専門学校/J-STAGE)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/keles/5/0/5_22/_pdf/-char/ja
この論文が言いたいこと
この論文のメッセージは、驚くほどシンプルです。
教師が自分の授業を「研究」することで、授業の質が上がり、教師自身も成長する。
ここで扱われている「実践研究」とは、大学の研究者が行う研究だけを指しません。
現場の先生が、自分の授業や指導を観察し、記録し、振り返り、改善していく取り組みを含みます。
実践研究とは?
実践研究:先生が「自分の授業」を材料にして、うまくいった点・うまくいかなかった点を整理し、次の授業改善に活かす研究。
(注釈)実践=実際の授業や指導のこと/研究=理由や仕組みを探って、次に活かすこと。
論文のポイントは、「研究のやり方」は特別な人だけのものではない、という立場です。
問い(疑問)を立てて、データ(授業の記録や生徒の反応)を集めて、考える。
この基本は、学術研究(大学などの研究)と同じ流れだ、と述べています。
学術研究との違い:でも“やること”は似ている
論文の整理に沿って、違いをわかりやすく言い換えると次の通りです。
- 学術研究:一般化できる理論や知見(「こういう傾向がある」)を作ることが主目的
- 実践研究:目の前のクラス・生徒のために、授業を良くすることが主目的
ただし、論文が強調するのはここです。
問いを立てる→記録する→振り返る→改善するという点では、実践研究も立派な“研究”になりうる。
論文が示すメリット:教師が研究すると何が起きる?
論文では、実践研究により次のような効果が整理されています。
- 授業を客観的に見られる(注釈:主観だけでなく、事実に基づいて見ること)
- 改善点が明確になり、授業の質が上がる
- 教師としての手応え・自信につながる
そして始め方としては、まずは他の実践研究を読み、「自分は何を知りたいのか」を言語化することが勧められています。
“研究”と言うと難しそうですが、実は疑問を丁寧に扱うことから始まる、というわけです。
学校教育と学習塾の差は「授業コマ数」にある
個人的な意見として、学校教育と学習塾の最も大きな差は授業コマ数(=学習に使える時間量)にあります。
この「時間量」の差は、気合いで埋まりません。構造の問題です。
文部科学省が示す中学校の標準授業時数(単位時間=50分)では、各学年の総授業時数は1015とされています。
出典:文部科学省「中学校学習指導要領(関連資料)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/
一方、一般的な塾の授業時間は、週2回〜3回、1回あたり1.5〜2時間程度という家庭が多いでしょう。
ここは塾・地域・学年で幅があるため断定はしませんが、学校(年1015コマ)と同じだけの時間を塾で確保するのは現実的ではありません。
だからこそ、塾は「学校の代わり」ではなく、限られた時間で効果を出す“特化機関”として位置づける方が、子どもにも家庭にも優しいと考えます。
塾はコマ数が少ない。だから受験に特化してよい
個人的な意見として、学習塾は受験に特化するほど価値が高まると思っています。
理由は単純で、時間が限られているからです。
塾が強みを発揮しやすいのは、たとえば次の領域です。
- 入試問題の分析(どこが出やすいか、どう点が入るか)
- 得点戦略(どの順番で解くか、捨て問の見極め)
- 弱点補強(ミスの型を潰す、短期で伸びる単元に集中)
逆に言えば、塾が「人生のすべての学び」を背負おうとすると、時間が足りず、家庭も子どもも疲弊しやすくなります。
塾は“全部”ではなく“ここ”を担当する。ここが明確なほど、結果も出やすい。これは精神論ではなく、設計の話です。
学校に求めるべきこと:教師が実践研究し、学問の面白さを届けてほしい
一方で、学校教育にこそ期待したい役割があります。
それが、参考論文が扱う教師の実践研究です。
学校の先生は、日々の授業の中で、子どもたちの反応をいちばん近くで見ています。
その現場で「なぜ伝わらなかったのか」「どこでつまずいたのか」を丁寧に拾い、次の授業に反映できるのは、まさに現場の教師です。
実践研究という視点が入ると、授業は次の方向へ動きやすくなります。
- 子どもの理解の“ズレ”を見つけ、説明を改善できる
- 教材や板書、問いかけを見直し、学びを深められる
- 「できた/できない」の先にある理由を扱える
そして何より、学校にしかできない価値は、学問の楽しさや興味づけを、幅広く体験させることだと思います。
塾は時間が短い。だから受験の優先度が上がる。
学校は時間が長い。だから世界を広げる役割が担える。
この分担は、とても自然です。
「それが将来、何に役立つのか」—この説明はやはり重要
中学生の質問で、もっとも誠実で、もっとも本質的な問いの一つがこれです。
「これ、将来何に役立つの?」
この問いに対して、大人が「黙ってやれ」と返してしまうと、勉強は作業になりやすい。
個人的な意見として、ここは学校教育が最も力を入れていいポイントだと思っています。
もちろん、すべての単元に“即効性のある用途”があるわけではありません。
しかし、用途があるかどうかだけではなく、学び方が脳の使い方を鍛えるという視点が、子どもを救うことがあります。
例:因数分解は日常で使わない。でも「問題解決の型」は残る
たとえば数学の因数分解。
日常生活で、一般の人が「(x+3)(x-2)」のように式を分解する場面は多くないでしょう。
ただ、因数分解が鍛えるのは「式変形」だけではありません。
個人的な意見として、因数分解の本質は、次の思考訓練にあります。
- 複雑なものを分解する
- 共通点(共通因子)を見つける
- シンプルな形にして扱いやすくする
この「分解→共通点→単純化」は、仕事や生活の問題解決でも使います。
たとえば、人間関係のトラブル、家計の赤字、勉強の成績不振。
原因が絡み合っているものを、要素に分けて、共通原因を探して、対策を打つ。
まさに因数分解的な思考です。
なお、PISA(OECDの国際学習到達度調査)でも、数学の評価は単なる計算力ではなく、現実の文脈で数学を使って考え、判断する力(数学的リテラシー)を測る枠組みを取っています。
出典:OECD “PISA 2022: Mathematics Framework”
https://pisa2022-maths.oecd.org/ca/index.html
(注釈)リテラシー=知識を“使って”考えたり表現したりする力。
技能四教科(音楽・美術・体育・技術家庭)は、受験に直結しなくても価値がある
ここは誤解が生まれやすいところです。
中学生の現実として、「受験に出る科目」が優先されがちなのは理解できます。
ただ、個人的な意見として、技能四教科を“軽いもの”として扱うのは危険だと思います。
なぜなら、技能教科は「点数」よりも、人生を豊かにする基礎体力に関わるからです。
文化庁の資料でも、文化芸術体験が子どもにとって重要な資質(創造性、感性、コミュニケーション等)形成に関わる趣旨が述べられています。
出典:文化庁(調査研究報告)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/shinshin/kodomo/ikuseijigyo_kensho/pdf/94040401_01.pdf
(注釈)創造性=新しい考えや工夫を生み出す力/感性=感じ取る力。
音楽や美術、体育、技術家庭は、得点のためだけではなく、
「自分の好き」「集中できる」「手を動かす」「体で覚える」などの経験を通じて、
勉強とは違う回路で自己肯定感や生活力を支えてくれます。
学校と塾の棲み分けは、保護者が理解し、子どもに“目的”として伝えるべき
学校と塾は、対立関係ではありません。
本来は、役割分担ができるパートナーです。
そのために重要なのは、保護者が「目的」を整理し、子どもに伝えることです。
たとえば、次のように言葉にするだけで、子どもの学びは安定しやすくなります。
- 学校:基礎を広く学び、興味を増やす場所
- 塾:受験で勝つために、限られた時間で伸ばす場所
OECDも、家庭の関わり(保護者の学習支援や学校との関係)が、子どもの学習や社会性に関連することを整理しています。
出典:OECD “Parental involvement”
https://gpseducation.oecd.org/revieweducationpolicies/
(注釈)関連=「一緒に動く傾向がある」こと。原因が100%それだと断定する意味ではありません。
この論文が学校教育に与える示唆は「素晴らしい」—ただし、実行のための環境づくりが必要
個人的な意見として、この論文が投げかける学校教育への示唆は素晴らしいと思います。
教師が実践研究を行い、授業を良くし、子どもが学問に興味を持つ。
この循環が回れば、塾に頼り切らなくても、学力は土台から上がっていきます。
ただ同時に、現実の学校現場が忙しいことも、私たちは理解する必要があります。
実践研究は「やる気」だけでは続きません。
記録する時間、共有する場、同僚と改善する文化。
そうした環境が整ってこそ、研究が教育の力になります。
沖縄の受験を見てきて思うこと(控えめに)
最後に少しだけ。個人的な意見として、沖縄では「制度理解」と「学習設計」で差がつきやすい面があります。
どの高校・どの進路を目指すかによって、必要な準備が変わることは少なくありません。
だからこそ、家庭が情報を整理し、学校と塾の目的を分けることが、子どもの負担を減らします。
私自身も、沖縄の中学受験・高校受験について日々相談を受ける立場として、
「勉強量」ではなく「設計」で勝てる家庭を増やしたいと思っています。
(ここは大々的に言う話ではありませんが、検索してたどり着いた方には、同じテーマで役立つ情報が他にもあるはずです。)
教育は“全部やる”より“分けて伸ばす”ほうが強い
この記事の結論は一文です。
学校は「学問の面白さ」と「基礎の広さ」を育て、塾は「受験の得点力」を磨く。保護者はその目的を子どもに伝える。
そして、その中心にあるのが、参考論文が示した「実践研究」です。
授業を研究し、改善し、学びを深くする。
教師が学び続ける学校は、子どもの未来を確実に明るくします。
中学生向け:ここだけ覚えよう(超要点)
- 学校は「広く学ぶ」場所
- 塾は「受験で点を取る」場所
- 勉強は「考え方」を鍛えるトレーニング
- “なんで学ぶの?”を聞いていい。大人は答える努力をする
執筆者
比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。講師歴20年以上。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。






















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