スマホ読書は理解力を下げるのか?2022年科学論文が示した「脳・呼吸・学習効率」の関係

本記事要約

スマートフォンで読むと理解力が下がるのは本当なのか。2022年の科学論文では、紙とスマホで同じ文章を読ませたところ、スマホ読書の方が読解テストの成績が低く、前頭前野の活動が過剰になり、ため息が減る傾向が確認されました。研究は「負荷は強ければ良いのではなく、適切であることが重要」と示唆します。教育現場の視点からも、学習成果は努力量より負荷設計で決まり、理解できる状態を整えることこそが学力向上の鍵だといえます。


■参考記事要約(原文研究の内容)

参考論文:
Reading on a smartphone affects sigh generation, brain activity, and comprehension
https://www.nature.com/articles/s41598-022-05605-0

本研究は、「同じ文章を読んでも、スマートフォンで読むと紙より理解度が下がるのはなぜか」という問いを、生理反応の観点から検証したものです。

研究では健康な大学生34名に対し、同じ著者の小説文章を
・紙媒体
・スマートフォン媒体
の両方で読ませ、その後理解度テストを行いました。同時に、呼吸状態(呼吸の深さ・回数・ため息)と、前頭前野(思考・注意を司る脳領域)の活動を測定しました。

その結果、以下の現象が確認されました。

  • 読解テストの得点は紙媒体の方が有意に高かった
  • 読書中の呼吸は両条件で浅く速くなったが、ため息は紙の方が多かった
  • 前頭前野の活動はスマートフォン読書時の方が強かった

さらに統計解析では、
「ため息の減少」と「前頭前野活動増加」が関連し、その先に理解度低下が位置づく経路
が示されました。

研究者は、スマートフォン読書では視覚環境の影響などにより認知負荷(頭の処理量)が高まり、それが呼吸調整の変化や脳活動の過剰状態と関係している可能性を指摘しています。

ただし本研究は探索的研究(仮説生成段階)であり、因果関係が確定されたわけではない点も論文中で明記されています。


勉強の本質は「負荷の強さ」ではなく「負荷の設計」である

今回の研究結果を見て、多くの人はこう思うかもしれません。

「頭を使うほど勉強は伸びるのでは?」

しかし結果は逆でした。
スマートフォンの方が脳活動は強いのに、理解度は低かったのです。

ここから分かることは単純です。

負荷は強ければよいわけではない。

勉強に必要なのは
・強い負荷
ではなく
・適切な負荷
です。

強すぎる負荷は理解を助けるどころか、理解する前に疲労を生みます。研究でも、前頭前野の過活動は理解の低下と関連することが報告されています。

「ため息」は集中力低下ではなく調整反応の可能性

多くの人は、勉強中のため息を「やる気がないサイン」と考えます。
しかし研究は逆の可能性を示唆します。

ため息は呼吸のリズムを整える生理反応であり、呼吸の変動をリセットする働きがあるとする研究も存在します。

今回の論文でも、紙読書ではため息が増え、スマホ読書では減りました。

ため息が出る状態=集中が途切れた
ではなく
ため息が出る状態=脳が調整できている
可能性があります。

学習とは、努力量ではなく調整能力の問題でもあるのです。

「負荷が高いと勉強しなくなる」という現場の現実

ここから先は教育現場の実感です。

理解できない状態が続くと、生徒は努力しません。
努力しないのではなく、努力できない状態になるのです。

学習意欲は意志ではなく設計で決まります。

  • 難しすぎる
  • 読めない
  • 理解できない

この三つが重なると、脳は回避行動を取ります。これは心理学的にも自然な反応です。

重要なのは

勉強量を増やすことではなく
勉強可能な状態を作ること

です。

英単語が覚えられない本当の理由

英語が苦手な生徒の多くは、単語を覚えていません。
しかしさらに掘り下げると、覚えない理由は

読めないから

です。

読めない文字列は脳にとって意味を持たず、処理負荷だけが増えます。文字と音の結びつきが語彙学習を助けることは研究でも示されています。

つまり単語暗記の最初の壁は暗記力ではなく
可読性(読めるかどうか)
なのです。

国語授業が眠くなる本当の理由

国語の授業が眠くなる理由は単純です。

理解できていない文章を聞き続ける状態は、脳にとって最も負荷効率が悪いからです。

  • 簡単すぎる → 退屈
  • 難しすぎる → 思考停止

最適な理解状態はその中間です。

文章理解が成立して初めて思考が動きます。
思考が動いて初めて学習が成立します。

したがって、問題演習より先に「文章理解」を整える方が合理的です。

勉強とは“量”ではなく“設計”の技術である

今回の研究は、媒体の違いが理解度に影響する可能性を示しました。

しかし本質は媒体ではありません。

どの条件なら脳が最も働きやすいか

です。

学習とは努力論ではなく設計論です。

努力を強いる教育は続きません。
設計された学習は自然に続きます。

デジタルだから良い、悪いではない

2022年の研究は、スマートフォン読書が紙読書より理解度が低い傾向を示し、その背景として呼吸反応や脳活動の違いが関連している可能性を提示しました。

この結果が示す本当のメッセージは次の一文に集約されます。

勉強の成果は、努力量ではなく負荷設計で決まる。

学習環境を整えることは、才能を伸ばすことと同じくらい重要です。


■執筆者情報
比嘉 大(ひが たけし)沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。講師歴20年以上。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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