本記事概略
沖縄の中学生・上原キヨラさんが、東京大学のAI入門講座を修了したというニュースは、学びの形が大きく変わったことを示しています。今はネットとAIを使えば、地域に関係なく最先端の学びに挑戦できます。一方で、その変化に気づかない人との差は広がりやすくなっています。AI時代に大切なのは、暗記だけでなく、問いを立て、考え、使いこなす力です。その土台となるのは「読む・書く・考える」という基礎学力です。AIは人間の代わりではなく、使い方次第で可能性を広げる道具であり、学び続ける姿勢こそが未来を切り開きます。


2026年1月、沖縄から明るいニュースが届きました。東京大学のAI入門講座を修了した沖縄の中学生が紹介されたのです。この出来事は「すごいね」で終わらせるにはもったいない、今の時代の学び方を考える大切なヒントを含んでいます。
参考記事の要約(出典明示)
2026年1月5日、沖縄テレビは「東大のAI講座を修了 才能豊かな沖縄の中学生」というニュースを放送しました。
参考動画(沖縄テレビ・YouTube):
紹介されたのは、沖縄本島西海岸・読谷村の中学3年生、上原キヨラさんです。
上原さんは、東京大学大学院の松尾豊教授(AI研究の第一人者)が率いる松尾・岩澤研究室の「GCI(Global Consumer Intelligence)寄附講座」を修了しました。
この講座は、データサイエンスの基礎、機械学習・深層学習(※AIが大量のデータから特徴を学ぶ技術)、そしてAIを企業戦略や課題解決にどうつなげるかを体系的に学ぶ、大学生・社会人向けの本格的なAI入門講座です。
GCIの公式サイト:
https://gci2.t.u-tokyo.ac.jp/
ニュースの中では、直近期に約1万人が受講し、修了できたのは2割未満という説明もありました。上原さんは父親の「一緒にやってみよう」という声かけをきっかけに受講を開始し、課題を積み重ね、最終課題にも合格して修了証を手にしました。
さらに、上原さんは沖縄科学技術大学院大学(OIST)などの講座にも参加し、海洋や自然科学への関心を深めているとのこと。将来の夢は「沖縄の海をもっと深く研究する科学者になること」と語っていました。
このニュースをどう受け止めるべきか
このニュースは、単に「中学生が難しい講座を修了した」という話ではありません。むしろ本質は、学びの環境が変わり、努力の向き先が変わってきたという点にあります。中学生にも保護者にも、前向きな刺激になる一方で、静かに広がる差にも目を向ける必要があると感じます。
ネットとAIが「学びの天井」を壊した
かつて、東大の研究室の講義や最先端のAIの学びは、限られた人のものでした。しかし今は、ネット環境があれば、沖縄の中学生でも挑戦できる。これは「根性」や「才能」の話というより、学びの前提条件が変わったという話です。
学びの入り口が広がったことで、地域による教育機会の差は小さくなりつつあります。今回の上原キヨラさんの挑戦は、その変化を分かりやすく示してくれました。
気づいた人と気づかなかった人の差は広がりやすい
一方で、この変化はやさしいだけではありません。ネットやAIは「誰でも使える」ように見えて、実際は使い方を知っている人が先に進みやすい道具です。
ここで出てくるのがデジタルデバイド(情報格差)です。
※デジタルデバイド:インターネットやITを使える人と、使えない人の間に生まれる差。
上原さんの事例は希望であると同時に、気づけないまま日々が過ぎると差が広がりやすい現実も映しています。だからこそ、中学生も保護者も「使っていい」「学んでいい」という許可を自分に出してほしいと思います。
AI時代に「何を学ぶべきか」は誰にも断言できない
AIが急速に進化する中で、「これからは何を学べばいいの?」という問いは自然に生まれます。ただ正直に言うと、未来の正解を断言できる大人は多くありません。進化のスピードがあまりに速いからです。
事実として、ChatGPTは大学入学共通テストで高い正答率を出したという報道があります。
出典(TBS NEWS DIG):
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2413159
ここから言えるのは、「知識を覚えるだけ」ではAIに勝てない領域が増える、ということです。だからこそ、暗記の価値がゼロになるのではなく、暗記の上にある「使い方」「考え方」がより大事になっていく、と捉えるのが現実的だと思います。
AIは人間のための道具であり、使い方が結果を左右する
AIが高性能になっても、「人間が不要になる」という話とは別です。AIは人間のために使われる道具であり、何を質問し、出てきた答えをどう理解し、どう活用するかは人間側に残ります。
AIの答えは、質問の仕方で大きく変わります。つまり、AIが優秀であるほど、使う側の姿勢や理解力が結果に直結します。ここが、これからの学びの重要ポイントです。
AIを使いこなす鍵は、意外にも「基礎学力」
AI時代の学びで見落とされがちなのが、基礎学力の大切さです。AIは便利ですが、理解できない内容を出されても活用できません。小学生レベルの知識が土台にないと、大学院レベルの話は扱えない。これはAIでも同じです。
だから私は、AI時代ほど「読む」「書く」「計算する」「筋道立てて考える」といった基本を大切にしてほしいと思います。基礎があるからこそ、AIの力を伸ばせるのです。
商売として見ても、AIは「わかりやすさ」に寄っていく
ここで少し現実的な話をします。もしAIが難しい言葉ばかりで、使ってもよく分からない道具だったら、私たちは使い続けるでしょうか。多くの場合、答えはNOでしょう。
つまり、サービス提供者は「ずっと使ってもらう」ために、ユーザーが理解できるレベルに合わせて説明する方向へ進みます。東大レベルの力を持ちつつも、中学生にも分かるように話すAIが増えていく。これは自然な流れです。
その意味で、AIが賢いかどうか以上に、「使う人がどう使うか」が重要になっていきます。
私たちが取るべき姿勢
結論はシンプルです。
- AIを恐れない
- ただし過信もしない
- 基礎学力を大切にする
- AIを「思考の壁打ち相手」として活用する
上原キヨラさんの挑戦は、特別な天才の物語というより、環境を活かし、基礎を大切にし、一歩踏み出した結果です。この視点こそ、中学生と保護者の皆さんに持ってほしいと思います。
おわりに
AI時代は「勉強しなくてよくなる時代」ではありません。むしろ、何をどう学ぶかが、これまで以上に問われる時代です。そしてその出発点は、驚くほど地味な「読む・書く・考える」という基礎にあります。
沖縄からでも、中学生でも、未来は確実に開けている。今回のニュースは、その事実を静かに、しかし確かに教えてくれています。
執筆者情報
比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。講師歴20年以上。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。






















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