預金が“学び”に変わるとき~教育格差に向き合う金融の新しい役割~

記事要約

りそな銀行が開始した「ソーシャルインパクト預金(教育プラス預金)」は、預金者の負担を一切増やすことなく、経済的理由で学習塾に通えない子どもたちに学習機会を提供する新しい金融の仕組みである。預金額の0.1%相当を銀行が負担し、公文教育研究会と連携して小学生3000人が無償で学べる環境を整える点に特徴がある。近年、公教育の負担軽減と引き換えに家庭の教育負担が増し、経済力による学力格差が広がる中、この取り組みは教育格差を社会全体で補完するモデルとして評価できる。慈善ではなく、金融機関にとっても持続可能なビジネスとして設計されている点に意義があり、今後は地域金融機関にも広がることで、地域ぐるみの教育支援につながることが期待される。

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記事本文

「教育は家庭の努力に任されるもの」
「経済力の差が、学力の差になるのは仕方がない」

こうした言葉が、どこか当たり前の前提として語られるようになって久しくなりました。しかし本当に、それでよいのでしょうか。

2025年、りそな銀行が始めた「ソーシャルインパクト預金(教育プラス預金)」は、この“当たり前”に静かに疑問を投げかける取り組みです。預金者の負担はゼロ。それでも、経済的な理由で学習塾に通えない子どもたちが、無償で学ぶ機会を得られる――。

本記事では、この取り組みの仕組みを整理した上で、教育格差・公教育の現状・地域への波及という視点から考えていきます。対象は中学生およびその保護者の皆さんです。難しい言葉には注釈を入れながら、できるだけ丁寧にお伝えします。

参考記事の要約(事実整理)

以下は、朝日新聞AERA Kidsに掲載された記事をもとにした要点整理です。物語調ではなく、事実を中心にまとめています。

  • りそな銀行は2025年9月から、公文教育研究会と連携し「ソーシャルインパクト預金(教育プラス預金)」を開始。
  • 定期預金として預けられた金額の0.1%相当を、銀行側が負担して寄付。
  • その資金を原資に、就学援助制度等を利用している家庭の小学生3000人が、公文式教室に無償で通える仕組み。
  • 学習科目は算数・国語・英語の中から1科目。
  • 預金者の元本や利息は減らず、追加負担もない。
  • 何人の子どもに学習機会を提供できたかなど、社会的インパクトを可視化し、預金者にフィードバックする設計。
  • 初期目標は「預金残高3000億円・学習者3000人」。

▶ 参考記事(AERA Kids)
https://dot.asahi.com/aerakids/articles/-/271084

▶ 公式サイト
りそな銀行:https://www.resonabank.co.jp/kojin/teiki/social/
くもん:https://www.kumon.ne.jp/press/15641/

教育格差は「努力不足」ではなく「構造」の問題

日本では、子どもの9人に1人が「相対的貧困」状態にあるとされています。
※相対的貧困:社会全体の平均的な生活水準と比べて、著しく所得が低い状態のことです。

1クラス30〜40人と考えると、約4〜5人が該当する計算になります。これは感覚論ではなく、国の統計でも示されている事実です。

経済的に厳しい家庭では、

  • 学習塾や習い事に通わせられない
  • 家庭学習を十分に見てあげる時間がない
  • 教材や学習環境を整えにくい

といった要因が重なりやすくなります。その結果、「学びのスタートライン」そのものが違ってしまうのです。これは個人の努力以前に、社会全体の構造の問題だといえるでしょう。

公教育の変化と、家庭にかかる負担

近年、公教育では教員の働き方改革が進められています。長時間労働を是正することは重要ですが、その一方で、次のような声も聞かれます。

  • 補習の機会が減った
  • 個別対応が難しくなった
  • 学力の底上げが家庭任せになりつつある

結果として、経済的に余裕のある家庭ほど学習塾を「必須の教育インフラ」として利用し、そうでない家庭との学力差が広がる構図が生まれています。

沖縄においても、この問題は決して他人事ではありません。

金融が教育を支えるという新しい発想

今回の取り組みで注目すべき点は、「誰かの善意」だけに頼っていないことです。

  • 寄付を強要しない
  • 預金者に追加の負担を求めない
  • 銀行にとっても持続可能なビジネスとして成立している

個人的な意見としては、社会課題への貢献と企業の利益は、必ずしも対立するものではなく、同時に成立しうることを示した好例だと感じます。

なぜ「公文」なのかという疑問について

「なぜ公文だけなのか」という疑問が出るのも自然です。確かに、オンライン教材や他の学習支援の形も考えられます。

ただし、

  • 全国規模での展開
  • 学習効果の検証(エビデンス)
  • 教室網の安定性

これらを同時に満たす組織は限られます。その点を踏まえると、小学生の基礎学力に焦点を当て、公文式を選択した判断は合理的だったと評価できます。

沖縄への波及を期待したい

個人的な意見として、最も期待したいのは地域金融機関への波及です。

沖縄には、琉球銀行、沖縄銀行、海邦銀行といった地銀があります。これらが地域の実情に合わせ、教育と連動した金融商品を展開できれば、その社会的インパクトは非常に大きいでしょう。

「教育は家庭だけの責任ではない」「地域全体で支えるものだ」――そのメッセージを、金融という形で示すことには大きな意味があります。

おわりに――静かだが、確かな一歩

この取り組みは派手ではありません。しかし、確実に子どもたちの未来を支える仕組みです。

預金という日常的な行為が、知らない誰かの学びにつながる。そんな社会が広がっていくなら、日本の教育はまだ希望を持てる――そう感じさせてくれる事例でした。

執筆者情報

比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。講師歴20年以上。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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