定員が空いているのに不合格――それは本当に「冷たい教育」なのか

本記事の要約

文部科学省の調査で、2025年度公立高校入試において「定員内不合格」が全国で1770人発生し、沖縄県は224人と全国最多となった。定員に空きがあるのに不合格が出ることに「冷たい教育ではないか」との声もあるが、2024年度の沖縄県立高校の志願倍率を見ると、普通科・専門学科・農林系を問わず、県内全域で定員割れが起きている実態が分かる。これは一部地域の過疎による問題ではなく、高校数や学科構成が少子化や進路の多様化に追いついていない構造的課題である。個人的には、定員割れだからと無条件に入学させることが必ずしも生徒のためになるとは限らず、入学後の不適応や中途退学のリスクも考慮すべきだと考える。問われているのは合否の是非ではなく、子ども一人ひとりに合った学びの場を社会としてどう用意するかである。

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【参考記事の要約】

文部科学省は、2025年度の公立高校入試において、定員に余裕があるにもかかわらず不合格となった「定員内不合格者」が全国で延べ1770人に上ったと公表しました。
都道府県別では沖縄県が224人で全国最多となり、山口県・高知県・広島県が続いています。一方、東京・大阪・愛知などでは4年連続でゼロとなっており、地域差の大きさが浮き彫りになりました。

不合格の理由には、学力不振や不登校のほか、障害のある生徒が「学力や意欲が足りない」と判断された事例も含まれ、教育を受ける権利の侵害ではないかという指摘も出ています。

文部科学省は「定員内不合格が直ちに否定されるものではない」としつつ、「学ぶ意欲のある生徒に学びの場が確保されることは重要」として、各教育委員会に対し、不合格者を出していない自治体の取り組みを参考にするよう通知しています。

参考記事:

公立高入試の定員内不合格1770人 沖縄県が最多、地域差大きく(日本経済新聞)

はじめに ―― 多くの人が感じる素朴な疑問

「定員が空いているなら、入れてあげればいいのではないか」
「不合格にするのは、あまりに冷たい対応ではないか」

今回の報道を見て、こう感じた保護者や中学生は少なくないでしょう。
その感覚はとても自然です。しかし、この問題は感情だけで判断すると、本質を見誤ってしまう可能性があります。

そもそも「定員内不合格」とは何か

「定員内不合格」とは、募集定員に空きがあるにもかかわらず、不合格となることを指します。

誤解されがちですが、「本来は全員合格できたのに、意図的に落とした」という意味ではありません。
高校入試では、学力や学習意欲、高校生活を継続できる見通しなどを総合的に判断するため、一定の基準に達しないと判断された場合は不合格となることがあります。

沖縄の現実 ―― 2024年度 最終志願倍率一覧

以下は、2024年度(令和6年度)における沖縄県立高校・学科・コース別の最終志願倍率データ(一般入試)です。
※志願倍率が1.0を下回る学科・コースは、募集定員に対して志願者が少ない状態(いわゆる「定員割れ」)を示します。

■ 普通科・代表例

高校名 学科 定員 最終志願倍率
辺土名 普通 40 0.10
自然環境 普通 40 0.97
北山 普通 80 0.75
北山 理数 40 0.29
本部 進学・情報 40 0.17
宜野座 普通 120 0.47
嘉手納 総合 185 0.59
北谷 普通 280 0.78
那覇国際 普通 240 0.94

■ 工業・専門科・代表例

高校名 学科 定員 最終志願倍率
名護商工 工業・電気 20 0.63
名護商工 建築 40 0.54
美里工業 電気 80 0.43
美来工科 土木工学 40 0.51

この一覧から読み取れること

この一覧から分かるのは、定員割れが「北部など一部の過疎地域だけの問題ではない」という点です。
中部・南部の普通科や総合学科、さらには進学志向が高いと見られがちな学校でも、倍率が1.0を下回っています。

また、普通科だけでなく、工業・農林・専門系など、学科の種類を問わず定員割れが起きています。
これは、高校の配置や学科構成そのものが、現在の生徒数や進路志向と合わなくなってきている可能性を示しています。

なぜ定員割れと定員内不合格が同時に起きるのか

個人的な意見としては、次の三点が背景にあると考えます。

  • 入学後の学力差が大きくなっていること
  • 高校は「入る場所」ではなく「3年間通い続ける場所」であること
  • 教員による個別支援には限界があること

私はどう考えるか

個人的な意見としては、「定員が割れているのだから全員を無条件に受け入れるべきだ」という考えには賛成できません。
入学後につまずき、結果的に退学してしまう生徒をこれまで数多く見てきたからです。

問題の本質

問われているのは「合否」ではありません。
高校の数や配置、学科の内容、進学以外の選択肢を社会として示せているかという、制度と構造の問題です。

おわりに

定員内不合格という言葉は冷たく聞こえるかもしれません。
しかしその背景には、教育現場の苦悩と、子どもの将来を思う判断があります。

執筆者情報

比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。講師歴20年以上。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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