読書する子はなぜ伸びるのか?──“知的好奇心”が育む学力と生きる力

◆参考記事の要約

宮城県仙台市教育委員会と東北大学加齢医学研究所の共同研究では、14年にわたり小中学生の学力と生活習慣を分析しました。
特に「読書習慣」「勉強時間」「睡眠時間」の3つの要素が学力にどう影響するかを詳細に調べた結果、
読書時間が長い子どもほど学力が高いという明確な傾向が確認されました。

読書時間で3群に分けると、
「読書を全くしない子」では、勉強時間と睡眠時間が十分であっても平均点を少し上回る程度。
「1時間未満の読書をする子」は、6時間以上の睡眠と30分以上の勉強で平均点を上回る傾向。
「1時間以上読む子」は、勉強時間が短くても平均点を大きく上回る結果となりました。

研究チームはこの結果を「読書によって脳の言語処理能力が発達するため」と結論づけています。
読書が左脳の白質を発達させ、情報処理力・理解力が向上することで、全教科に良い影響を与えるというのです。
これは仙台市だけでなく、世界中の追試研究でも再現されており、
読書は学力向上の普遍的な要因といえます。

参考:川島隆太『本を読むだけで脳は若返る』(PHP研究所)
👉 参考記事:「本好きの子どもの学力は明らかに高い」調査が明らかにした読書の効果(PHPオンライン衆知)

◆「読書=勉強のため」ではなく、「好奇心のため」へ

沖縄進学塾を運営している中で、保護者の方からよくこう尋ねられます。
「国語力を上げるためには、やっぱり読書ですよね?」

確かに、読書は語彙力や表現力を伸ばし、国語の読解力を高めます。
しかし、読書の本質は“学力を上げる手段”ではなく、“知的好奇心を育てる時間”だと私は考えています。

学力を上げるために読む、というのは本末転倒です。
読書とは、知らない世界に触れ、考え、感じる時間。
それが結果として、理解力や思考力を鍛え、学力向上につながるのです。

◆知的好奇心が学力を押し上げる理由

研究結果を見て納得できるのは、「読書が好きな子はそもそも知的好奇心が強い」という点です。
新しい言葉を知りたい、なぜそうなるのかを考えたい——そうした心の動きが、読書を通して自然に鍛えられます。

たとえば、理科が好きな子が図鑑を読み漁るように、興味のある分野から入ることで「もっと知りたい」という欲求が広がります。
この好奇心が、学校での学びにも波及していきます。
つまり、「読書好きの子=学びを楽しめる子」なのです。

◆読書がすべての教科に効く理由

読書は国語だけでなく、理科や社会、英語、さらには数学にまで良い影響を与えます。
なぜなら、どの教科にも「読解」が必要だからです。

理科の実験手順、社会の資料問題、数学の文章題——すべてに「書かれた情報を正確に理解する力」が求められます。
この力こそが、日々の読書によって鍛えられる「基礎体力」です。

また、読書を通して身につく「抽象化の力(※具体的な内容から共通点を見出す力)」と「要約の力(※要点をまとめる力)」は、すべての学習の基盤になります。
本を読んで「結局この話は何を言いたかったのか?」と考える習慣をもつだけで、子どもの思考力は確実に伸びていきます。

◆家庭でできる“読書×会話”のすすめ

では、どうすれば読書が「楽しいもの」になるでしょうか。
私は、“読書を会話につなげる”ことが一番の近道だと思います。

たとえば、朝食の時間に「昨日読んだ本にこんな話があったんだけど、どう思う?」と話題にしてみる。
子ども新聞の記事や短い読み物でも十分です。
読書で得た知識を「話す→聞く→考える→また読みたくなる」という循環が生まれれば、
それが知的好奇心を刺激する最高の学びの場になります。

読書は一人でするものと思われがちですが、
実は“対話”によって深まる学びでもあるのです。

◆読書を通して育つ「生きる力」

読書には、成績だけでは測れない力もあります。
それは「感情を理解する力」と「他者を思いやる力」です。

登場人物の気持ちを想像すること、異なる立場を考えることは、まさに人間理解そのもの。
こうした経験の積み重ねが、子どもたちの共感力や想像力を豊かにします。
AI時代の今こそ、「人の心を読む力」こそが人間の最大の武器になるのではないでしょうか。

◆読書が苦手な子へのアプローチ

「うちの子、本が嫌いで…」という声もよく聞きます。
そんなときは、“活字”ではなく“興味”から入るのがおすすめです。

たとえばマンガでも構いません。
ストーリーに夢中になれば、「もっと知りたい」という気持ちが芽生えます。
その延長線上で、図鑑や解説書に手を伸ばせば、それも立派な“読書”です。

最初の目的は「読ませる」ことではなく、「好きな世界に浸らせること」。
その時間こそが、後の深い学びの土台になります。

◆まとめ──“学ぶ子”を育てるのは“楽しむ時間”

読書は「成績を上げるための義務」ではなく、「人生を豊かにする遊び」です。
学力を伸ばす子どもは、読書を“努力”ではなく“楽しみ”として続けています。

まずは、親子で同じ本を手に取ってみてください。
ページをめくりながら、「これ、どう思う?」と問いかけてみる。
その対話の積み重ねが、学びの喜びを育て、やがて子ども自身が「もっと知りたい」と思う原動力になります。

勉強とは、突き詰めれば“知ることを楽しむ”行為。
そして、その第一歩は1冊の本から始まるのです。

執筆者:比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、小学生・中学生の学習支援や中学受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。
学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。
「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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