「テストの点だけでは測れない力」——放課後と塾が育てる“本当の賢さ”とは?

「勉強はできるけど、人の話を聞かない」——ある母親のつぶやきから

「うちの子、勉強はできるんです。でも、人の話を聞かないんですよね」。
那覇市で行った面談で、あるお母さんがそう言いました。成績は上位、模試もA判定。それでもクラスの友達とトラブルが多く、先生からは「落ち着きがない」と言われる。
このとき私は思いました。“学力”だけでは、人は育たない。

そんなとき出会ったのが、今回の参考記事——
「学力重視はもはや危険!? 本当の賢さにつながる“非認知能力”が放課後で育まれる理由」(Yahoo!ニュース・東急キッズベースキャンプ代表 島根太郎氏)。
この内容は、子どもの学びを見直す大きなヒントになります。


参考記事の要約:放課後にこそ育つ“数値化できない力”

記事では、学力(認知能力)に偏った教育の危うさを指摘しています。
テストで測れる点数だけでなく、やり抜く力・共感力・好奇心・自制心・協調性といった“非認知能力”が、これからの社会で重要になるという内容です。

学校での年間学習時間は約1200時間。一方で、放課後や学童で過ごす時間は約1600時間。
つまり、子どもが最も長く過ごす「放課後の時間」こそが成長の土台になるといいます。

東急キッズベースキャンプでは、民間学童を通じて「遊び」「対話」「自発的な活動」の中で、子どもたちの非認知能力が育つことを確認。
OECD(経済協力開発機構)もこれを「社会情動的スキル(Social and Emotional Skills)」と呼び、学力と並ぶ重要要素として位置づけています。


比嘉 大の視点:非認知能力は“評価”ではなく“支援”で育てるもの

私はこの考え方に深く共感します。
那覇・浦添の塾で生徒を見ていると、同じ成績帯でも「他人を助けられる子」「諦めずに考える子」「先生の話を真っ直ぐ聞ける子」は確実に伸び方が違います。
これは点数には表れませんが、将来にわたって差をつける力です。

ただし注意すべきは、非認知能力を“評価基準”にしてはいけないということ。
「この子は協調性がある」「この子はない」といった主観的評価が教育現場に入ると、先生の好みや人間関係で左右されてしまう危険があります。
非認知能力は“測る”のではなく、“支える”もの。
大人が見守り、声かけし、本人が気づく中で育つ力です。


放課後という「自由の中の教育」

放課後は、学校や塾では得られない学びが詰まっています。
「自由に遊ぶ」「人とぶつかる」「思い通りにいかない」——これらはすべて、社会に出たときに役立つ“人間力”の練習です。

たとえば、部活動での失敗や友達との口論。
その中で「ごめん」と言える力、「もう一度やってみよう」と立ち上がる力。
これこそが非認知能力の本質であり、テストの点では測れない“生きる力”なのです。


学校・家庭・塾の役割分担を整理してみよう

場所 主な役割 育つ力
学校 集団生活・社会性・協調 他者理解・責任感
学力・思考力・学習習慣 認知能力
家庭 感情の支え・価値観の形成 非認知能力

保護者が「どこで何を育てたいのか」を意識するだけで、子どもの成長の方向性が明確になります。


非認知を育てる“家庭の会話術”

非認知能力を伸ばす方法は、実はとてもシンプルです。それは「会話」です。

  • 「今日はどんなことを頑張ったの?」
  • 「うまくいかなかったとき、どうした?」
  • 「次はどんなやり方をしてみたい?」

この3つの質問を、1日5分だけでも続けてみてください。
問いを通じて、子どもは“考える習慣”を身につけていきます。
これは、どんな高額教材よりも効果的な“家庭教育”です。


非認知と学力の両輪を支える——学習塾の選び方

保護者が特に悩むのが、「どんな塾がうちの子に合うのか」という点。
実は、塾のタイプを見極めることで、子どもの伸び方はまったく変わります。

① 塾の3タイプを知ろう

タイプ 特徴 メリット 注意点
テスト対策型 学校の過去問・定期テスト重視 内申・順位が上がりやすい 入試・応用に弱い傾向
思考力育成型 教科書+応用問題で基礎から積み上げ 入試・模試に強い 成果が出るまで時間がかかる
総合型(ハイブリッド) 定期テスト+入試対応 バランスが取れる 講師力で差が出る

② 子どもの性格に合わせて選ぶ

子どものタイプ 向いている塾
短期的に成果を出したい テスト対策型
コツコツ型・論理的思考が好き 思考力育成型
まだ方向が定まっていない 総合型

③ 見学時に見るべきポイント

  • 授業後、講師がどれだけ生徒に声をかけているか
  • 生徒が笑顔で質問しているか
  • 「やらされている雰囲気」ではなく「やりたい雰囲気」があるか

パンフレットよりも、子どもたちの表情を見るのが一番の判断材料です。

④ 広告より“在籍生の変化”を見よ

  • 帰宅後に塾の話を楽しそうにしているか
  • 自分から「今日はここができなかった」と話すようになったか
  • 苦手科目への向き合い方が変わってきたか

この3点が当てはまれば、その塾は「学力」と「非認知能力」の両方を伸ばせる環境です。

⑤ 沖縄で塾を選ぶときの地域性

  • 那覇・浦添エリア:入試志向の強い模試型塾が多い
  • 南部エリア(豊見城・南風原など):学校連動型で内申対策に強い
  • 離島・中部:オンライン併用型が主流

通いやすさよりも、「子どもが笑顔で通っているか」を基準にするのが正解です。

比嘉 大より一言
「塾選びは“情報戦”ではなく、“信頼戦”です。
この先生に見てもらいたい——子どもがそう思えたとき、学力も人間力も一気に伸びていきます。」


まとめ:子どもの“本質”を見抜く目を

非認知能力(人間力)と認知能力(学力)は、どちらも欠かせません。
学力ばかりを追うと、心が疲弊し、
人間力ばかりを重視すると、学びの習慣が薄れます。

大切なのは、両輪のバランスです。
放課後で人間力を、塾で学力を、家庭で心の軸を育てる。
そのサイクルが整ったとき、子どもは本当の意味で“賢く”なります。

今日からできる一歩は、たったひとつ。

「今日、どんなことを頑張った?」
その一言が、子どもの未来を変える最初のスイッチになります。


執筆者:比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、小学生・中学生の学習支援や中学受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。
学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。
「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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