「勉強しない子」はいない。――“環境”を変えれば、どんな子も学び出す


「うちの子、勉強しなくて困っていて……」
そういう相談を、保護者の方からよく受けます。
けれど私はいつもこう答えます。
「勉強しない子なんて、いませんよ」と。

やる気がないのではなく、やる気が出にくい環境にいるだけ。
今回は、そのことを示す心理学実験と、沖縄進学塾での実例を交えながら、
「学びが始まる環境づくり」についてお話しします。


参考記事の要約:「やる気」よりも「環境」を変える力

東洋経済オンラインの記事
『偏差値28→70!部活三昧だった中学3年生の息子…。成績向上の一助となった《部屋の作り方》とは?』
では、「やる気を出す」のではなく「やる気を削ぐ要因をなくす」という視点から、環境が学習に与える影響を紹介しています。

心理学者クルト・レヴィンの「場の理論」に基づき、オランダ・ユトレヒト大学の実験が紹介されます。
お菓子を20cm・70cm・140cmの距離に置いたところ、距離が遠くなるほど手を伸ばす人が減ったのです。
つまり、人は「物理的距離」によって「心理的距離」も変化するということ。

筆者はこの理論を息子の勉強部屋づくりに応用。
壁や天井に公式・単語を貼り「見ようとしなくても学習内容が目に入る部屋」を作りました。
その結果、偏差値28から70へ。
やる気よりも環境が学力を変える――それがこの実践の結論でした。


AI時代でも塾が必要な理由

AI教材もオンライン学習も進化しています。
それでも「塾」がなくならないのは、人は自分で環境を整えることが難しいからです。

家庭では、テレビやスマホ、家族の声など誘惑が多い。
一方で塾は、勉強に集中できる「場」をデザインしてあります。
つまり塾とは、意志ではなく環境によって「学びを始められる場所」なのです。

ただし、塾ならどこでもいいわけではありません。
私語が多い、質問しづらい、自習室がない――。
そんな塾では成果は出ません。
良い塾の条件は「集中・質問・印刷」がすぐできること。
これが、学習効率を支える三本柱です。


会話の中で理解は深まる ― 質問の力

イリノイ大学の研究(Chi et al., 1994)では、他人に説明する・質問するなどの対話型学習は、独学より平均30%理解度が高いと示されています。
つまり「質問できる環境」は、学びを加速させる最高の装置です。

沖縄進学塾でも、「質問するために塾に来ている」という子が多いです。
AIが答えをくれる時代だからこそ、対話を通じて理解を深める力が本当の学力になります。


プリント1枚から始まる「即行動」

行動経済学者ジェームズ・クリア氏(『Atomic Habits』)は「行動を簡単にすることが習慣化の鍵」と述べています。
プリントをすぐ出せる塾は、まさにその“仕組み”を備えています。

家庭では印刷や準備に時間がかかり、やる気が冷めてしまう。
一方で塾では思い立った瞬間に教材を印刷し、すぐ取り組める。
この“即行動のリズム”が、勉強を続ける力になります。

今日からできる一歩:
家庭でも「今すぐ解ける教材」を机に1つ置いておきましょう。
“選ぶ手間”を減らすだけで集中力はぐっと上がります。


スマホを「視界から消す」勇気

カリフォルニア大学の研究(Ward et al., 2017)によると、スマホを机に置くだけで認知能力が11%下がります。
通知が鳴らなくても、存在するだけで脳を分散させるのです。

だから塾では、スマホを強制的に遠ざけるルールがあります。
家庭でも「見えない場所に置く」だけで集中力が回復します。

今日からできる一歩:
勉強中はスマホを別の部屋に。
たったこれだけで集中時間が15分以上伸びるという実験もあります。


やる気は“最初の5分”で生まれる

東京大学・池谷裕二教授の研究によると、人は行動を始めて5分ほどでドーパミンが分泌され、集中状態に入ります。
つまり、「やる気が出てからやる」ではなく、「やっているうちにやる気が出る」もの。

塾の空気は、その“最初の5分”を支えてくれます。
隣の生徒の姿、先生の声、開かれたノート――それだけでスイッチが入るのです。

今日からできる一歩:
「5分だけ」と決めて机に向かいましょう。
始めるハードルを下げることが、やる気を生む最短ルートです。


学力は生活習慣の延長線上にある

睡眠や食事、起床時間などの生活リズムが安定している子ほど、成績も安定します。
スタンフォード大学のマシュー・ウォーカー博士の研究でも、「睡眠中に記憶が再構成される」ことが確認されています。

今日からできる一歩:
朝の1時間は“インプット”、夜の10分は“振り返り”。
これを1ヶ月続けるだけで集中の質が変わります。


「定義を問う質問力」が、思考力を育てる

沖縄進学塾に在籍する県内6位の生徒(偏差値78)が、模試のあとにこんな質問をしました。
「先生、貯金と預金と貯蓄って何が違うんですか?」

私は答えました。
「預金は銀行に預けるお金。貯金は銀行以外で貯めるお金。貯蓄はその両方を含む資産のこと。」

この質問ができた時点で、彼女の理解は一段深まりました。
定義を問う力は、すべての教科で通用する学びの根幹です。

今日からできる一歩:
「これはどういう意味だろう?」
そう考える時間こそが、思考力を鍛える瞬間です。


沖縄の子どもたちに伝えたい ― 環境を選ぶ勇気

沖縄の子どもたちは、人とのつながりが深く、温かい文化の中で育っています。
その反面、集中する“ひとり時間”を作るのが難しい環境でもあります。

だからこそ、これからの時代に必要なのは、
「自分で環境を整えられる力」です。
塾は“強制的に集中できる場所”であると同時に、
自分の環境を設計する力を学ぶ場所でもあります。


まとめ:意志ではなく、環境が人を変える

勉強が苦手な子の多くは、「やる気がない」のではなく「やる気が出にくい部屋にいる」だけ。
教材を開いたままにする。
スマホを見えない場所に置く。
質問できる場所に身を置く。
その小さな工夫が、未来を変えていきます。

まずは環境を変えることから始めてください。
きっと、お子さんの表情と成績の両方が変わります。


執筆者プロフィール:
比嘉 大(ひが たけし)
沖縄県を拠点に、中学受験・高校受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。

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📘 勉強は意志ではなく環境。
お子さんに合った「学びの場」を、一緒に見つけましょう。

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