参考記事の要約
出典:文春オンライン『乳幼児を学習塾に通わせる保護者は47.6%、小学2~3年生向けなのに高校1年生水準の内容を勉強…韓国で“うつ病”になる子どもが激増している“教育競争”のリアル』
https://bunshun.jp/articles/-/82663
韓国では、乳幼児期からの「教育競争の低年齢化」が深刻化している。
教育省の調査によると、2歳児の24.6%、3歳児の50.3%、5歳児の81.2%が学習塾に通っており、未就学児全体では47.6%に上る。小中高校生を含めた私教育市場は29.2兆ウォン(約3兆円)で過去最大。富裕層ほど教育費に投資し、「英語幼稚園」「ノリ学校(遊び体験型)」など、多様な塾が乱立している。
また、「4歳考試」「7歳考試」と呼ばれる英語塾入園テストも登場。小学生向け医学部塾では高校1年生レベルの問題が出題されるなど、過剰な先取り教育が進む。
その一方で、子どものうつ病や不安障害が急増。2020~2023年に9歳以下のうつ病患者は全国で2倍、江南地区では3倍に増えた。
90歳を超える元園長・金明子氏は「知識は検索できても、考える力は検索できない」と語り、幼児期こそ“考える土台づくり”が大切だと警鐘を鳴らしている。
競争が低年齢化する社会に、教育の原点を問い直す
韓国の現状を知ると、思わず息をのむ。
「2歳から塾」「4歳で入園試験」「小3で高校内容」——まるで大人の競争社会を、そのまま子どもに投影したかのようだ。
しかし、この流れは日本でもじわじわと進んでいる。英語、プログラミング、探究型学習……。どれも大切な要素だが、“発達段階”を無視した教育は、子どもの心と体に負荷をかける。
私はこれまで、沖縄進学塾で多くの小中学生を見てきた。確信を持って言えるのは、幼少期に本当に必要なのは論理的思考より、体験を通した具体的思考の発達だということ。
見て、聞いて、触れて、話して、感じる。五感での学びが、のちに“考える力”を育てる。
「抽象思考」は育ちの結果であって、目的ではない
人類の歴史をたどれば、言葉は具体から抽象へと発展してきた。まだ文明が成熟していない民族の言語には、「水」「石」「太陽」などの具体語が多いが、「正義」「幸福」などの抽象語は少ないという。
つまり、人の思考もまず“体験”の積み重ねがあり、その先に“抽象化”が生まれるのだ。
それなのに、2歳・3歳の子に「論理的に考えなさい」と教えることは、木の芽を引っ張って早く伸ばそうとするようなもの。
一時的には伸びたように見えても、根が弱ければすぐに倒れてしまう。
もちろん例外もある。小さい頃から抽象的理解ができる子もいる。だが、それはあくまで一握り。
「全員に早期教育を」と求める風潮は、凡人の犠牲で成り立つ社会をつくってしまう。
沖縄進学塾が「早期教育」に線を引く理由
「そうは言っても、沖縄進学塾も受験塾でしょう?」
そう聞かれることがある。けれども、私たちは「早期教育」ではなく、“発達段階に合わせた教育”を行っている。
中学受験を希望する場合でも、小学校5年生から。それ以前は、発達段階がまだ抽象思考に適していないため、偏差値50以下の子どもには無理をさせない。受験は目標であっても、「自分の成長を感じる学び」を最優先にしている。
小学生や中学生は、まだ“育ちの途中”だ。点数を追う前に、「学ぶって楽しい」という気持ちを守らなければならない。学力は「学びの楽しさ」の上にしか育たない。
家庭は「最初の教室」——会話が思考を育てる
論理的思考の原点は、家庭の中にある。
「どうして空は青いの?」「なんで星は光るの?」
そんな問いを、忙しい日常の中で聞き流さず、一緒に考えてほしい。
親子の対話は、最初の“探究学習”である。
塾で教える知識より、家庭で交わす言葉のほうが、ずっと深く心に残る。
親が子どもと「考える時間」を共有するだけで、学ぶことへの信頼が育つ。
教育は塾任せにする時代ではない。むしろ、塾は「家庭で育てた好奇心を伸ばす場所」になっていくべきだ。
生活習慣は“人間力”の鏡
成績の良い子ほど、生活リズムが整っている。これは長年の経験から間違いない。
朝起きる時間、食事のタイミング、寝る時間。
この“リズム”が乱れると、集中力・記憶力・意欲すべてが下がる。
生活習慣こそ最大の学習法だ。
たとえ勉強が得意でなくても、「決めたことを続ける」習慣がある子は、必ず伸びる。塾に通う以前に、「生活を整える力」を身につけることが、すべての出発点である。
今週からできる!親子の学び3ステップ
- Step1: 親子で「なぜ?」を3分話す
夕食時やお風呂の時間に、「なんで?」をテーマに一問。たとえば「なんで海はしょっぱいの?」一緒に考え、翌日までに調べる。これだけで探究力が育つ。 - Step2: 生活リズムを“見える化”
寝る・起きる・勉強する時間を1週間カレンダーに書き出す。乱れても叱らず、「どんなときにズレたか」を話すだけでいい。習慣づけは“自覚”から始まる。 - Step3: 親も一緒に机に向かう
「勉強しなさい」と言うより、「一緒にやろう」と声をかける。親が本を読む姿こそ、最高の教育メッセージだ。
那覇・沖縄の家庭にこそ、“家庭教育力”を
那覇市でも、共働き家庭が増えている。夕方は学童、夜は塾。親子でゆっくり話す時間がない家庭も多い。
しかし、家庭での「1日10分の会話」が、学力を左右するという調査もある(文部科学省・2023年)。
子どもが学ぶ環境を整えるとは、塾を増やすことではなく、「家庭の中に小さな学びの時間をつくる」ことだ。
沖縄進学塾でも、「宿題より家庭の会話を増やしてください」とお願いすることがある。なぜなら、勉強は“知識の入力”で終わりではなく、“言葉で出す”ときに定着するからだ。
“偏差値のため”から“人生のため”へ
子どもたちにはそれぞれの得意分野がある。絵が好きな子、体を動かすのが好きな子、工作が得意な子。社会には、どんな仕事にも価値がある。
高偏差値を目指すことが目的ではなく、やりたいことに必要だから勉強する。
そうした考え方を、小学生・中学生のうちに身につけてほしい。
「何のために学ぶのか?」この問いを、親子で何度も話し合ってほしい。その対話こそが、進学よりも大切な“人生の方向づけ”になる。
子育ては80年のうちのわずか1/4——だから楽しもう
子どもが最も手のかかるのは小学生。中学生になると、少しずつ自分で世界を広げていく。18歳を過ぎれば、親の手はほとんど届かない。
人生80年のうち、子育てはたった20年。だからこそ、結果に追われず、一緒に笑い、一緒に悩む時間を楽しもう。
子どもが泣いた日も、怒った日も、それは「親子の物語の1ページ」だ。競争よりも共感を、焦りよりも信頼を。それが、学力にも人生にも、一番の力になる。
沖縄県を拠点に、小学生・中学生の学習支援や中学受験に関する情報発信を行う教育インフルエンサー。
学習塾の運営のほか、調剤薬局、ウェブ制作会社、ウェブ新聞「泡盛新聞」の経営など、25歳で起業して以来、自社7社・間接経営補助10社を展開。
「教育が沖縄を活性化させる」という志を持ち、地域学力や家庭教育の課題について積極的に発言している。
この記事のテーマまとめ(1分サマリー)
- 幼児期に必要なのは「先取り」より「体験」
- 抽象思考は“育ち待ち”で自然に育つ
- 家庭の会話が思考の根をつくる
- 生活習慣は最大の学力
- 親子3分の「なぜ?」対話で学びの芽が育つ
- 偏差値よりも「自分の好き」を見つける
- 子育ては“共育”——一緒に育つ時間を大切に
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