2025年8月19日に開かれた文部科学省の特別部会で、先生の仕事を3つに整理し直す改訂案が示されました。
本記事はその要点をやさしくまとめ、家庭(保護者・中学生)として何ができるかを、語り口調で考えます。
参考記事の要約(リンク付き)
1)ReseEd(リシード)記事の要点
文部科学省は、先生の業務を次の3分類に整理する改訂案を示しました。①
学校以外が担うべき業務(例:通学路の見守り、学校徴収金の管理、保護者からの過剰な苦情・不当要求の対応など)、
②教員以外が積極的に参画すべき業務(学校Webや広報資料の作成、ICT機器の保守、プール・体育館の管理など)、
③教員の業務だが負担軽減を促進すべき業務(給食時間の対応、教材印刷、成績処理、学校行事準備、進路指導の準備、支援が必要な家庭への対応は専門職と協働)。
目的は、先生が授業や生徒理解といった「先生でなければできない仕事」に専念できるようにすることです。
▶ 参考:保護者からの過剰な苦情・不当要求「学校以外が担う」文科省が改訂案(ReseEd)
2)文部科学省「配布資料(PDF)」の要点
改訂案のスライド(資料01-02)には、3分類の代表例が一覧化されています。たとえば「保護者の過剰な苦情・不当要求の対応」は
学校以外が担うべき業務と明記。「ICT機器の保守・管理」「学校Webの作成・管理」は事務職員等を中心に、地域の実情に応じて外部委託(がいぶいたく:外部の専門業者にお願いすること)も検討。
「学習評価・成績処理」「学校行事の準備」などは支援スタッフやデジタル技術の活用で教員の負担軽減を促進、と整理されています。
▶ PDF:資料01-02「学校・教師が担う業務に係る3分類 改定案」(文部科学省)
▶ 部会ページ:教師を取り巻く環境整備特別部会(第2回)配付資料
3)報道にみる動向(時間外勤務の上限目標など)
近い将来の目標として、1か月の時間外勤務45時間以下を100%に、さらに年間の時間外勤務は月平均30時間程度を目指すといった文言が議論されています。
これらは、部会で示された指針改正案および関連法改正の流れの中で、教育委員会に業務量管理計画の策定・公表を義務付ける動きとセットで位置づけられています。
この記事の読み方(中学生と保護者へ)
中学生のみなさんへ:この記事は、「先生は何をする人?」をいっしょに考える内容です。
むずかしい言葉には(注)を入れ、安心して読めるようにしています。
保護者の皆さまへ:SNS時代の学校と家庭の関係を、対立より協力へと転換するヒントをまとめました。
一部には私自身の体験談も含まれますが、一般化はせず、事実(資料)と意見(個人の見解)を分けて記します。
私が今回の改訂案をどう受け止めたか
1)「忙しさ」は昔から――けれど境界線はあいまいだった
個人的な意見としては、先生の忙しさは「最近はじまった」わけではなく、昔からありました。
ただ、何が学校の仕事で、何が学校以外の領域なのかという境界線は、長らくあいまいでした。
だからこそ、今回のように「3分類」を言葉で共有することは、大切な第一歩だと感じます(注:3分類=学校以外/教員以外が参画/教員の業務だが負担軽減)。
2)尊重と信頼――対話の回路を取り戻す
個人的な意見としては、地域の目や家庭のまなざしが先生を支え、現場が回っていた面があったと思います。
一方で、SNS(注:ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及で声が広がりやすくなり、
ときに「要望」が「要求」になりやすい側面もある――そんな空気の変化も感じます。
ただし、SNSが直接の原因だと単純に断言する根拠はありません。ここは慎重に、対話の回路をどう開くかを考えたいところです。
3)先生の専門性を守るために――「任せる」勇気
今回の改訂案が強調するのは、先生が「先生にしかできないこと」に集中すること。
例えば、学習評価や成績処理の補助、学校行事の段取りなどは、支援スタッフやデジタルの力で軽くできる。
施設の保守やWeb管理は、事務部門や外部委託に任せる。「任せる」ことは「手放す」ことではなく、子どもの学びの質を上げるための戦略だと私は捉えています。
4)「属人化(ぞくじんか)」の魅力とリスク
私は、先生の授業や言葉に「その人らしさ」がにじむ属人性は、学びの魅力だと思っています。
でも、すべてを先生のがんばりに依存する仕組みは続きません。だからこそ、仕組みで代替できるところは仕組みに。
そのバランス感覚が、これからの学校づくりに欠かせません。
5)現場での私の経験(塾での出来事)
私の現場(沖縄の進学塾)でも、「夏休みの課題を見てほしい」というご相談を受けることがあります。
もちろんフォローはしますが、毎日の確認や管理は基本的にご家庭の役割だとお伝えしています。
これは学校・塾で「丸抱え」するのではなく、家庭と学校(塾)が役割を分け合う考え方に通じます。
経験談ではありますが、役割分担が見えると、子どもが自分で動きやすくなると感じています。
3分類をやさしく図解(テキスト版)
A:学校以外が担うべき業務
- 通学路の見守り、放課後の見回り/補導対応
- 学校徴収金の徴収・管理(公会計化など)
- 保護者の過剰な苦情・不当要求など、学校では対応が困難な事案
- (必要時)勤務時間前・下校後の預かり活動は学校外の管理体制で
- 調査・統計の回答は事務主導+デジタル活用
B:教員以外が積極的に参画すべき業務
- 学校の広報資料・Webの作成/管理(事務職員中心、外部委託も)
- ICT機器・ネットワークの保守(事務中心+教育委員会と連携)
- プール・体育館等の施設管理(必要に応じて外部委託を検討)
- 校舎の開錠・施錠、校内清掃の合理化、休み時間の安全配慮の輪番化
- 部活動は地域展開・地域連携を推進
C:教師の業務だが、負担軽減を促進すべき業務
- 給食時間への対応(食育は栄養教諭が中心)
- 授業準備(教材印刷などは支援スタッフ活用+デジタル)
- 学習評価・成績処理(採点補助や自動採点の併用)
- 学校行事の準備・運営(事務や支援スタッフと協働、外部委託も検討)
- 進路指導の準備、支援が必要な児童生徒・家庭への対応(専門職と協働)
(注)外部委託=学校以外の専門事業者に仕事を依頼すること。
支援スタッフ=教員をサポートするために配置される非常勤職員など。
地域展開=部活動を地域クラブ等と連携して運営する考え方。
働き方の見通し:時間外勤務の上限目標
いま議論されている指針改正案には、「1か月の時間外勤務が45時間以下の教職員の割合を100%へ」、
さらに「年間の時間外勤務は月平均30時間程度を目指す」という目標が示されています。
これは、教育委員会に対して業務量管理・健康確保の計画策定と公表を義務づける流れと結びついたものです。
なお、詳細な技術的定義として、文部科学省の資料では「在校等時間(ざいこうとうじかん)」の考え方や、
1か月45時間・年間360時間を上限の原則としつつ、緊急時等の一時的な上限(例:1か月100時間未満、45時間超の月は年6回まで)などの枠組みが整理されています。
(注)在校等時間=在校時間に、校外の職務やテレワーク等の時間を加え、休憩や自己研鑽等を除いた、外形的に把握できる勤務時間のこと。
家庭と地域ができる5つのこと
- 要望は「提案」型で:事実(いつ・どこで・誰が・何を)を整理し、落ち着いた言葉で。
- SNSより先に対話:気になる点は、まず学校の相談窓口へ。記録(メモ)を残すと双方に親切。
- 役割の線引きに敬意を:「学校以外が担う」業務は、地域・行政・専門家と協力して解決。
- 学びの自立を応援:宿題管理や家庭学習の習慣化は、家庭の大事な領域。
- 専門職の力を信頼:福祉・心理・医療など専門家と学校がつながると、解決策の幅が広がります。
Q&A:よくある疑問
Q1. 「学校以外が担うべき」とは、学校が何もしないということ?
いいえ。連携の設計は学校も大切にします。ただし、現場だけで抱え込まない――それが趣旨です。
Q2. 正当な意見まで「過剰な苦情」になるの?
いいえ。事実の共有と冷静な対話は歓迎されます。人格攻撃や過度な要求が問題となります。
Q3. 部活動はどうなる?
地域クラブ等との連携を進める方向性です。先生の負担を減らしつつ、子どもの活動の場を守る発想です。
おわりに――「先生の仕事」をみんなで守る
今回の改訂案は、分担の言葉を明確にし、対話のルールを更新する試みだと私は受け取りました。
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