「学力が下がった」の正体を見に行く――スマホは“敵”にも“味方”にもなる|中学生と保護者のための実践ガイド

参考記事の要約(3分で読める要点)

文部科学省が公表した「経年変化分析調査」の結果をもとに、FNNプライムオンラインは小学6年・中学3年の学力スコアが近年下がっていること、家庭でのスマホ・テレビゲーム時間の増加が一因の可能性として指摘されていることを解説。背景として、コロナ禍による学習環境の変化、保護者側のスマホ使用時間の長さ、教員の多忙化や教育格差の懸念などが取り上げられました。スマホの使い方については、親子でルールを決める重要性が示されています。

▶参考記事:【解説】子どもの学力が大幅低下なぜ 小6・中3の学力調査…スマホ・テレビゲーム使用は増加 保護者に要因も(FNNプライムオンライン)


わたし(筆者)のまなざし:不安を“行動”に変えるために

「学力が下がっています」と聞くと、胸がざわっとしますよね。けれど、ここで大切なのは“原因をひとつに決めつけない”こと。スマホだけが悪者なのではなく、習慣づくり・学校現場の忙しさ・家庭の働き方や会話の量――いくつもの歯車がかみ合って、はじめて子どもの学びは前に進みます。

実は、国の定点観測にあたる「経年変化分析調査」でも、スコアの低下とともに家庭の社会経済的背景(SES=家計状況・学歴などを含む背景の指標)が低いほど下がり幅が大きい傾向(中学英語を除く)が示され、テレビゲーム・スマホの使用時間が長いほど学力が低い傾向も確認されています。ただし、これは“相関”であって“原因と結果”を断定するものではありません。

もう一つ、誤解がちなポイントも共有します。毎年の全国学力調査(悉皆)の結果公表スケジュールや経年比較の方法は整備されていますが、「毎年ほぼ同じ問題を出している」わけではありません。経年比較ができるように設計・尺度化(IRT=項目反応理論)されているから年度をまたいだ比較が可能なのです。

2025年の“いま”に起きていること(事実の整理)

  • 経年変化分析調査(2024年度実施)の公表(2025年7月31日)では、小6:国語・算数、中3:国語・数学・英語で平均スコアの低下が報じられました。
  • 同調査の「保護者に対する調査」では、家庭でのゲーム・スマホ利用時間が伸びている一方、学校外学習時間が長いほどスコアが高い傾向が示されています(相関)。
  • 一方でOECDのPISA 2022等の分析では、学習目的でのデジタル機器の“適度な”活用は成績との正の関連が見られる国がある一方、娯楽的な用途や過度の利用は成績との負の関連がしばしば観察されます(相関)。

つまり「スマホ=悪」ではなく、“いつ・何のために・どれくらい使うか”がカギだ、ということです。

なぜ“下がって見える”のか――「習慣」の影響を見落とさない

コロナ禍に小学校へ入学した子どもたちは、いちばん大事な「学習習慣」をつくる時期(小1〜小3)に通常と違う環境を経験しました。ここで机に向かうリズム宿題の手順が十分に育たなかった子は、小6・中3の現在に“積み残し”が表れやすくなります。とくに小数・分数、文章読解、語彙(ことばの数・使い方)の単元は、後の学年にも響く“土台”です。この視点は、複数の公的データの「結果」とも矛盾しません。

スマホは“諸刃の剣”――でも正しく握れば“学びの剣”になる

わたし自身(個人的な意見として)は、スマホを学習の補助に使うとプラスに働く場面を教室で見てきました。たとえば、夏休みの調べ学習や語句の言い換え、辞書・翻訳の確認で使うと効率が上がります。沖縄進学塾でも、7月中に宿題を終えて8月は演習と定期テスト対策に集中できた生徒が多くいました(これはあくまで当塾の観察で、全体傾向を断定するものではありません)。

研究面でも、教師が目的を明確に示した“指導つき利用”は学習成果の向上と関連するという報告があります(対照的に、授業中の気晴らし用途過度な使用は成績との負の関連)。

だからこそ、家庭と学校で「使い方の設計図」を共有することが大切です。

今日から実践:家庭の「スマホ設計図」10カ条

  1. 場所のルール:勉強中はスマホを机の上に置かない(棚や別室へ)。
  2. 目的のルール:「調べ物・辞書はOK/SNS・動画は学習後」と用途を区別。
  3. 時間のルール:娯楽用途は累計30〜60分/日など、明確な上限を親子で決める。
  4. タイマー運用:開始と終了をタイマーで可視化(ズルズル延長を防ぐ)。
  5. スクリーンタイムを“一緒に”確認:親も自分の使用時間を見せて、透明性を高める。
  6. 就寝90分前はオフ:睡眠の質を守る(ブルーライト・入眠遅延を避ける)。
  7. 通知を切る:学習時間は通知オフや機内モードを基本設定に。
  8. 学習アプリの“定番”を固定:辞書・英和・用語集などをホーム1画面目に。
  9. ごほうび設計:学習→運動→娯楽の順で短い楽しみをセット。
  10. 月1回の家族ミーティング:運用を見直し、ルールをアップデート。

※「適度」の目安は子によって異なります。上の数値はあくまで出発点。様子を見ながら前後させてください。

“スマホ以前”に効く3つの習慣――学力の土台をもう一度

  • 毎日おなじ時刻にスタート:15分でもOK。「始める時間」を固定すると、集中が早まります。
  • “わからない”を翌日に持ち越さない:解説を見る→似た1問を自力で解く、までを1セットに。
  • 親も“ながら見”をやめる:子が学習中は親もスマホを置いて本を読む――これがいちばん効きます。

習慣は、静かに、でも確実に効いてきます。国のデータでも「学校外の勉強時間が長いほどスコアが高い」傾向が示されています(相関)。

よくある質問(短答)

Q. スマホを完全に取り上げるべき?
A. 一律の正解はありません。学習目的の適度な活用はプラスの関連が、娯楽的・過度な利用はマイナスの関連が多く報告されています。まずは用途の区別時間の枠を。

Q. 「学力調査」は毎年おなじ問題?
A. 同じではありません。経年比較ができるように出題設計と尺度(IRT)で調整されています。

Q. 今回の「下がった」は日本全体が危機?
A. 単年の数字で断言はできませんが、下がり幅が大きいという指摘があり、
継続的な分析が求められています。焦らず、でも先送りせず、「家庭でできること」から手を打つのが大切です。

親子で今週やってみるチェックリスト(印刷OK)

  • [ ]宿題スタート時刻を家族カレンダーに固定した。
  • [ ]スマホの学習用フォルダーをホーム1画面目に作った。
  • [ ]“通知オフ”ショートカットを作り、勉強前にワンタップできるようにした。
  • [ ]「調べ物OK/娯楽は後」の合言葉を決めた。
  • [ ]週末に15分、親子でスクリーンタイムを一緒に見た。

おわりに――“結果”を変えるのは、今日の小さな一歩

学力はテスト点だけでは語りきれませんが、見える指標は進路の扉を開く合図にもなります。習慣を整え、スマホの“設計図”を描く。たったそれだけで、学びの歯車は静かに回り出します。
わたしは教室で、その瞬間を何度も見てきました(個人的な意見)。不安を、行動に。今日からご家庭で、一緒に始めましょう。


注釈(むずかしい語のミニ解説)

  • SES:家庭の社会経済的背景(家計状況・保護者の学歴・職業などを総合した指標)。
  • IRT:項目反応理論。年度や問題が違っても学力を共通のものさしで比べられるようにする統計手法。

出典・参考

  • FNNプライムオンライン「子どもの学力が大幅低下なぜ…」2025/8/1。
  • 文部科学省「令和7年度 全国学力・学習状況調査の報告書・集計結果について」(結果公表(1)(2)スケジュール・IRT記述)。
  • 文部科学省「経年変化分析調査・保護者に対する調査の結果(概要)」2025/7/31(相関の示唆・端末利用・SES)。
  • 文科省 資料「保護者調査のポイント」2025/7/31(ゲーム・スマホ時間の増加等)。
  • 朝日新聞「経年変化分析調査:小6と中3の学力スコア低下」2025/7/31。
  • OECD「PISA 2022 Results, Vol.I」(適度な学習利用は正の関連/過度な娯楽利用は負の関連)。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

沖縄進学塾へのお問合せはこちら

お問合せ