参考記事:
竹内薫『スーパーAIが人間を超える日 汎用人工知能AGI時代の生き方』(プレジデント社)
はじめに:AIが進化すると、学校の先生はどうなる?
もしも、限りなく人間に近い「AGI(汎用人工知能)」が実現したら──。そんな未来が現実味を帯びる中で、「先生」という仕事の意味が見直されようとしています。
参考記事では、サイエンス作家の竹内薫さんが「AIの進化で代替できる授業」と「AIには決してできない教育」の違いについて、具体的な例を交えて語っています。
「計算ドリルや英単語の暗記はAIで充分。でも、子どもの個性を見出したり、心の成長を支えたりするのは、人間の先生にしかできない。」
とても印象的な言葉でした。この記事では、その内容をもとに、「AI時代の教育と先生の役割」について考えてみたいと思います。対象は、中学生とその保護者の方々です。
AIは、辞書や参考書のような存在になる
まず大前提として、AIの進化は止められません。スマートフォンが広く普及したように、AIもまた、今後の学びに欠かせない「道具」として生活に浸透していくでしょう。
かつて、テレビゲームが「頭が悪くなる」と言われていた時代がありました。しかし近年の研究では、ゲームが脳の処理能力や判断力を鍛える可能性があることも示されています。
同じように、「ネットで調べた情報はすぐ忘れる」という意見もありますが、情報の質と量を考えると、ネット検索のほうが効率的なケースも多いのです。AIも同じで、使い方によっては「学びを深める最強の相棒」になる可能性があります。
知識を得る「手段」は、時代とともに進化してきた
歴史をふり返ってみると、知識の伝達手段は常に変化してきました。
- 新聞が主流の時代には「ラジオなんて流行らない」と言われ、
- ラジオが人気になると「テレビなんて定着しない」と言われ、
- テレビの時代には「インターネットは一部のオタクだけ」と言われていました。
そして今、AIにも同じような疑念が向けられています。でも、どの時代も結果的に「新しい技術が生活を変え、学び方も進化させてきた」のです。
今後はスマートグラスやコンタクト型デバイス、あるいは身体に直接情報をインプットする仕組みが主流になるかもしれません。こうした技術は、「調べる」「記憶する」「理解する」というプロセスそのものを変えていくでしょう。
AIの得意分野と、人間の先生にしかできないこと
AIの強みは、「情報の整理・再生・計算のスピード」です。つまり、正確な知識やデータを届けるのが得意です。でも、そこに「意図」や「文脈」や「感情」はありません。
人間の先生が持つ「クリエイティビティ」「共感力」「個性の発見力」は、AIには真似できません。
たとえば数学の授業で素数を教えるとき、AIは「素数の定義」「1〜100までの素数」を正確に説明できます。でも、素数の面白さを「暗号と関係しているんだよ」と生徒の関心に結びつけて語れるのは、人間の先生ならではです。
教師の価値は「情報を教える」から「問いを引き出す」へ
AI時代に求められる先生像は、知識を教えるのではなく、「生徒に問いを与える先生」です。
- 「この事実について、君はどう思う?」
- 「その答えに至るまでに、どんな過程があったの?」
- 「他の視点から見たら、どう考えられると思う?」
こんな問いかけを通じて、「自分で調べ、自分の頭で考える力」を育てる先生。まさに、「魚を与えるのではなく、釣り方を教える先生」です。
AIが「優秀すぎる」からこそ、問いを持つ力が試される
AIは質問者のレベルに応じて答え方を変えます。つまり、表面的な質問には表面的な答え、深い質問には深い答えを返してくれます。
これは、生徒だけでなく先生にも求められる力です。「なぜ学ばないのか?」「どうしたら自分で学びたくなるのか?」といった問いを持つ先生こそが、必要とされる存在になるでしょう。
AIが生徒の味方になるために、先生ができること
AIは「学びの支援ツール」です。でも、それをうまく活用するには、先生の関わりが必要です。
「AIを禁止する」のではなく、「どう使うか」を教える先生が、これからの教育において重要な存在になります。
「失敗しても大丈夫」と言ってくれる大人の存在
AIは合理的ですが、人生は非合理なもの。ときには「意味がなくても挑戦したい」という気持ちもあります。
そうした「心の声」や「挑戦」を応援し、「失敗してもいいんだよ」と言ってくれる大人。それこそが、AIにはできない、先生の最大の役割なのです。
まとめ:AIと共にある未来で、私たちはどう学ぶか
- AIは学びの強力なサポーターになる
- でも、心や個性を育てるのは人間の先生にしかできない
- 先生の役割は「教える」から「気づかせる」へと進化する
- AIを禁止するのではなく、活用の方法を導くのが新しい教育
- 失敗から立ち直る力(レジリエンス)を育てるのも人間の仕事
これからの時代、「AIとどう付き合うか」が子どもたちの学び方を大きく変えていきます。だからこそ、親として・先生として、AIを「敵」ではなく「共に学ぶパートナー」として受け入れる姿勢が大切なのかもしれません。
この記事は以下の参考記事をもとに執筆しました:
竹内薫『スーパーAIが人間を超える日 汎用人工知能AGI時代の生き方』(プレジデント社)
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