参考記事:
「卒業後も伸び続ける力を育てたい…公立進学校で非認知能力を「AIで可視化」の深い理由」
偏差値だけじゃない「見えない力」をどう育てる?──非認知能力のAI可視化に見る新しい教育のかたち
最近、長崎県の県立諫早高校が「非認知能力」をAIで可視化する取り組みを始めたという記事を読みました。この記事(上記リンク)では、旧来の偏差値偏重教育から脱し、生徒の主体性や対話力、創造力など、テストの点数には現れにくい力をどう育て、どう評価するのかに迫っています。
非認知能力とは、簡単に言えば「目に見えない力」。思考力、判断力、表現力、協調性、やる気、主体性など、人生や社会で生きていくために必要な基盤のような力です。最近ではこの力こそが、学力や知識以上に子どもたちの未来を切り拓くカギとして注目され始めています。
諫早高校では、AIを使ってこの非認知能力を数値化・可視化するツール「Ai GROW(アイ・グロー)」を導入。自己評価と他者評価(クラスメート3人)を組み合わせ、それをAIが補正して公正な評価を行うという、まさに現代的な試みです。
保護者としての気づき:偏差値に縛られない価値観の広がり
この記事を読んで最初に感じたのは、「やっとここまで来たか」という思いでした。
偏差値というものは、確かに勉強の成果を一目で見せてくれる便利な数字です。でも、その一方で、それだけでは測れない「人間としての深み」や「社会性」「粘り強さ」など、長い人生において大切な力が置き去りにされがちだったのも事実です。
「非認知能力の可視化」というこの取り組みは、そうした力をしっかりと見つめ、育てていこうという社会の新たな意志の表れだと感じました。
生徒にとっての“見えない努力”が報われる未来へ
しかし、実際に子どもたちがこの取り組みに本気になれるかと考えると、課題もあります。
例えば「それって受験に関係あるの?」という疑問は当然出てきます。現行の大学入試制度では、依然として偏差値や学力テストの点数が重視されているからです。せっかくの努力が入試に反映されないのであれば、取り組みに対する熱意も削がれてしまいかねません。
だからこそ、非認知能力の数値化が可能であるならば、国や教育機関がそれを大学入試に積極的に取り入れるべきだと思います。そうなれば、生徒たちも「未来につながる努力」だと納得し、自信を持って取り組めるようになるでしょう。
また、この取り組みは、小学校の早い段階から導入することで、より自然に非認知能力を育てていくことが可能になるはずです。
「偏差値不要論」には慎重さも必要
一方で、「偏差値なんてもういらない」という極端な意見に流されるのも危険です。
確かに偏差値偏重の価値観には限界がありますが、だからといって勉強や学力を軽視してよいわけではありません。基礎的な知識や論理的思考力は、AI時代においても重要です。
たとえば、YouTubeなどの情報発信で収入を得ようとするにも、コンテンツを企画し、伝えるための基本的な知識や語彙力、表現力が必要です。AIを使うにも、どの情報が正しいかを判断し、活用するための“人間側の理解力”が欠かせません。
教育におけるAIの役割とは
特に印象的だったのは、Ai GROWの評価方法が「AIが人間を評価する」のではなく、「人間の評価のバイアスを補正する」という視点だったことです。
これは医療の世界と同じ構図です。AIが診断を補助しても、最終的な判断は人間の医師が行います。教育も同様で、AIは補助者であり、決して教師や保護者に代わる存在ではありません。最終的に子どもと向き合い、その成長を支えるのは、やはり人の目と心だということを忘れてはいけないと思います。
勉強という“最強のトレーニング”
「非認知能力を育てる」と聞くと、何か特別な体験やプロジェクトが必要に思えるかもしれません。でも実は、日々の“勉強”こそが、非認知能力を鍛える最高のトレーニングなのです。
計画を立てて勉強を続けること、わからないことに粘り強く向き合うこと、模試やテストで失敗してもそこから立ち直ること──すべてが非認知能力を養う行為です。
最後に:子どもの“伸びる力”をどう支えるか
AI、探究学習、偏差値、非認知能力──時代のキーワードが次々と現れる中で、大切なのは「この子がどんな力を持っていて、それをどう伸ばせるか」という一点です。
諫早高校の事例は、教育の在り方を見つめ直す大きなヒントを与えてくれます。どんな子にも可能性はある。その芽を早く見つけ、信じ、丁寧に育てることが、これからの教育には求められているのだと改めて感じました。
そしてそれは、学校やAIだけでなく、家庭でも、私たち保護者が日々できることから始められるのです。子どもが自分の可能性を信じ、未来に向かって歩む力を育てるために──私たち大人ができることを、これからも考え続けたいと思います。
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