2025年、私たちの暮らしの中に、どんどん「AI(人工知能)」が入り込んできています。スマートフォンの中のアプリや、自動運転の車、さらにはお店でのレジ、病院の診断など、「えっ、これもAIだったの?」と驚くことがたくさんあります。
そんな変化の早い時代の中で、日本の中学校でも新しい教科「新・技術分野(仮)」が始まる予定です。これは、AIやセキュリティなど、デジタル社会に欠かせない知識を、もっとしっかり学べるようにするための新しい教科です。これまでの「技術・家庭科」を分けて、「技術」だけで情報教育を本格的に取り扱うことになるそうです。
では、この「新・技術分野」ってどんな内容なのでしょうか? そして、それは子どもたちにとって、どんな意味があるのでしょうか? そして保護者としては、どんなことを気にしておくべきなのでしょうか? 一緒に考えてみましょう。
どんなことを学ぶの?「新・技術分野」の内容
文部科学省が発表した内容によると、「新・技術分野」では次のようなことを学ぶ予定です。
データの集計や分析のしかた
・情報の伝わり方や、ネットの安全(セキュリティ)について
・生成AI(ChatGPTなど)のしくみや、プログラミングの基礎
・法令やルールを守ることの大切さ
・ネットやSNSのリスクについての正しい知識
これまでの「技術分野」では、木工や電気、栽培などが中心でしたが、それに加えて、デジタル社会に対応した知識を育てる方向に進んでいるのです。
また、小学校の3年生~6年生でも、「総合的な学習の時間」に、情報の収集や分析のしかた、ネットの危険性などを学ぶ時間が加わるそうです。
いい変化?それとも大変?
このように時代に合った教育が始まるのは、とてもよいことだと感じます。これからの社会では、AIや情報技術に対する理解がないと、将来の進学や仕事にも不安が残ってしまうからです。
しかし、同時にいくつかの心配な点もあります。
①「教える先生」は本当にいるの?
AIのしくみや、情報セキュリティについて教えるには、専門的な知識が必要です。しかし、今の学校現場では、そのような内容を教える先生がまだまだ少ないのが現実です。
「せっかく教科が増えても、内容がうすっぺらだったら意味がないのでは?」
「形だけの授業になってしまって、生徒にとっては負担が増えるだけでは?」
という心配の声が上がるのも無理はありません。
もちろん先生方も努力されているとは思いますが、新しい教科が始まるにあたっては、教員の研修やサポート体制がとても重要になってきます。
②生徒の負担が増えすぎない?
「今の子どもたちは、時間が足りない」という声も多くあります。部活動や習い事、宿題に追われる毎日。そこに新しい教科が加わることで、さらに時間や心の余裕がなくなってしまわないかが気がかりです。
また、「内申点」や「通知表」の対象になると、「テストの点を取らなきゃ」「暗記しなきゃ」といった**“勉強のための勉強”になってしまう恐れ**もあります。
「学ぶこと」=「評価されること」ではなくていい
情報教育の重要性は、もう誰もが認めるところです。でも、それをすぐに「テストの点数」や「受験の評価」に結びつけてしまうと、本来の学びの楽しさや意味が薄れてしまいます。
本来、こうしたAIやデジタルの学びは、未来の社会を考えるための“道具”であって、評価のための“ゴール”ではないはずです。
もし将来的に、AIを使って人を助けるような仕事をしたい!とか、自分でアプリを作ってみたい!という夢を持つ中学生が出てきたら、それはとても素晴らしいことです。その夢を育てるために、「新・技術分野」があるべきなのです。
親として、今できること
保護者としては、「AI?セキュリティ?難しそう…」と感じる方もいるかもしれません。でも、だからこそ大事なのは、
①「なぜ子どもたちがこうしたことを学ぶのか」を一緒に考えること
②「評価のためではなく、未来の自分のために学ぶんだよ」と伝えること
③学校にまかせきりではなく、家でもネットリテラシーやマナーを話す機会をつくること
この3つだと思います。
また、「情報教育って面白いね」「AIってこんなこともできるんだね」と、一緒に興味を持って会話をするだけでも、子どもにとっては大きな支えになります。
最後に:すべてを詰め込まず、選び取る力を育てて
これからの時代は、「知識の量」よりも、「知識をどう活かすか」が大切になります。だからこそ、文部科学省や教育現場には、教える内容をただ増やすだけではなく、「本当に必要なことは何か」を選び取っていく姿勢が求められます。
生徒たちがプレッシャーを感じすぎることなく、自分らしい学びを深められる環境をつくっていく。そのためには、大人たちの冷静な目と、子どもたちへのあたたかなまなざしが必要です。
「新・技術分野」は、子どもたちの未来の地図を描くための新しい“ペン”になるかもしれません。せっかくなら、そのペンを自由に使って、自分だけの未来を描いてほしい。そんな気持ちで、これからの教育を見つめていきたいと思います。
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